【ロンドン時事】英最大野党・労働党は29日、公的機関から是正を勧告された党内の「反ユダヤ主義」問題に絡み、コービン前党首の党員資格を停止した。前党首の支持者らは決定に猛反発しており、党に深刻な亀裂が生じる恐れもある。
人種差別事件の調査などを行う平等人権委員会は29日に公表した報告書で、コービン体制(2015~20年)下の労働党では党員らによる反ユダヤ主義的発言などの「違法行為があった」と認定。コービン氏が中東紛争でパレスチナを支援してきたことから、「反ユダヤ主義を黙認していると見なされ得る文化」が助長されたと示唆し、当時の執行部は告発への対応も不適切だったとして、問題解決に向けた行動計画の策定を求めた。
これに対しコービン氏は、力不足を認めつつも「党首として、あらゆる形の人種差別を排除する決意だった」と反論。「問題の規模がひどく誇張された」とも主張した。報告書を全面的に受け入れたスターマー現党首はこうした発言を問題視し、直ちに処分に踏み切った。
コービン氏は中道左派の労働党内で最左派。昨年12月の総選挙ではジョンソン首相率いる中道右派の与党保守党に歴史的大敗を喫し、辞任に追い込まれた。今年4月に後任に就いた中道寄りのスターマー氏は党勢の立て直しとともに、「コービン色」を党内から払拭(ふっしょく)しようと躍起になっている。
コービン氏は今回の処分について、スターマー氏の不当な「政治介入」だと強く抗議。コービン氏を支持する団体や労組幹部も「処分は(党内に)混沌(こんとん)を引き起こす」「新執行部による左派への猛攻撃だ」などと徹底抗戦の構えで、党の団結に暗雲が立ち込めている。