中国当局は同国フィンテック企業アント・グループによる上海と香港での新規株式公開(IPO)計画にブレーキをかけた。350億ドル(約3兆6600億円)に上る世界最大規模のIPOが頓挫した。

  アントは中国の電子商取引会社アリババグループ傘下の企業。上海証券取引所は3日の声明で、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が関係当局による「規制監督を巡る面談」に呼び出されたことを挙げ、アントの新規上場を一時停止すると発表した。

  声明はまた、規制を巡る環境に「大きな変化」があったとし、「こうした重大な問題により、アントは上場や情報開示に関する要件をもはや満たさなくなる可能性がある」と説明している。

  上海証取の発表後間もなく、アントは当局への届け出で香港上場も一時停止されることを明らかにした。上海・香港両市場での上場はいずれも5日の予定だった。

  アリババグループの米国預託証券(ADR)は3日の米株式市場で一時、前日比9.7%下落した。アリババはアント株の約3分の1を保有している。香港ハンセン指数先物も一時1.3%下げた。

  中国人民銀行(中央銀行)と他3つの金融監督当局は2日、あまり例のない合同会議を開き、馬氏をその場に呼び出していた。事情に詳しい複数の関係者によれば、当局はアントに対する精査強化や同社が資本やレバレッジに関して銀行と同様の規制を受けることになると伝えた。

  アントの担当者にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。

  馬氏は中国内外の規制当局がイノベーションを阻害し、発展や若者の機会を十分に大切にしていないとの批判を展開していた。先月下旬の上海での会議では、銀行の資本要件を定めたバーゼル合意を高齢者クラブになぞらえていた。これを受け、中国国営メディアはこのところ、アントに対して厳しい目を向けていた。

原題:China Stops Jack Ma’s $35 Billion Ant IPO From Going Ahead (1)(抜粋)