[ワシントン 6日 ロイター] – 米労働省が6日に発表した10月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比63万8000人増と、前月の67万2000人増から伸びが鈍化した。新型コロナウイルス感染が各地で再拡大し、政府支援が先細る中、景気回復ペースが失速している兆候が改めて示された。
市場予想の60万人増は上回ったものの、コロナ禍の打撃を受けた雇用市場の回復が始まった5月以降で最小の伸びとなった。雇用者数はコロナ前の2月時点でのピーク水準を1010万人と大幅に下回る。
失業率は6.9%と、前月の7.9%から改善した。予想は7.7%だった。ただ、コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっており、これを除くと失業率は約7.2%だった。
現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は、前月の12.8%から12.1%に低下した。
人種別では、黒人の失業率が前月比1.3%ポイント低下の10.8%、白人の失業率は1%ポイント低下の6%だった。双方の格差は4.8%ポイントと2カ月連続で縮小し、5月以来の低水準となった。
10月時点で、半年以上仕事がない人は360万人と、120万人増加。経済的理由によりパートタイムで働く人は38万3000人増え、670万人に達した。10月中旬時点で何らかの失業給付を受けている人は最低2150万人。多くの女性が育児などを理由に労働力人口から外れている。
時間当たりの平均賃金は前月比で0.1%、前年比で4.5%、それぞれ上昇した。労働参加率は0.3%ポイント上昇し61.7%。2月時点の水準からは1.7%ポイント下回っている。
業種別では、娯楽・宿泊の雇用者数が27万1000人増加し、全体の伸びの4割強を占めた。4月以降では480万人増えたものの、2月時点の水準をなお350万人下回っている。専門職・企業サービスは20万8000人増加。製造業は3万8000人、建設業は8万4000人、それぞれ増加した。
小売りは10万4000人増加。このうち家電店が3万1000人と、伸びの約3分の1を占めた。4月以降では190万人増えたものの、2月時点の水準を約50万人下回っている。
政府関連は26万8000人減少。国勢調査のため臨時雇用された労働者が14万7000人減少したことが響いた。
ロヨラ・メリーマウント大学(ロサンゼルス)のSung Won Sohn経済学教授は「回復は当初は目覚ましかったが、その後失速した」とし、「追加経済対策が近く策定される見込みがない中、新型ウイルス感染は拡大しており、今後の雇用増は難しくなる」と指摘。PNCフィナンシャル(ピッツバーグ)のチーフエコノミスト、ガス・ファウチャー氏は「雇用は2015年終盤と同等の水準にしか回復していない。10月のペースを踏まえると、雇用が感染拡大前の水準に戻るにはあと1年4カ月ほどかかる」と述べた。
米大統領選の結果が紛糾すれば、年内に追加経済対策が策定される可能性は一段と遠のくため、米連邦準備理事会(FRB)の対応が注目される。ING(ニューヨーク)のチーフ国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は、政治的な緊張の高まりで迅速な財政出動が阻まれば、FRBは一段の刺激策を導入せざるを得なくなるとの考えを示した。