【ワシントン時事】バイデン次期米政権の対日政策は、トランプ大統領と安倍晋三前首相の間で機能した首脳関係重視からオバマ前政権同様の「実務的な関係重視」(元米政府高官)に転換するとみられる。
元高官は「日本で(米中関係を重視してきた)民主党政権に神経質になる人がいることは承知している」と指摘する。その上で、ブリンケン元国務副長官らバイデン前副大統領の外交アドバイザーは同盟を最優先に考えていると強調。懸念は払拭(ふっしょく)されるとの見方を示した。バイデン氏も日本などの同盟国と連携し、中国に対抗していく考えを明言している。
焦点となる在日米軍駐留経費の日本側負担をめぐる交渉については、ホワイトハウスの元当局者は「実務者による交渉を重視する姿勢に戻ることになる」と指摘。「(トランプ氏のような)法外な要求をすることはない」と見ている。
また、オバマ前大統領が日本政府と主導した環太平洋連携協定(TPP)については公約である政策綱領への記載を見送った。市場開放に慎重な中西部の「ラストベルト」(さび付いた工業地帯)の激戦州に配慮、当面は「いかなる新たな貿易協定交渉にも入らない」と記された。トランプ政権下で保護主義に傾いた政策の急転換は難しく、バイデン氏は持論であるTPP再交渉を封印している。
一方、激変が予想されるのがエネルギー政策だ。環境重視と規制強化を掲げるバイデン氏は就任即日に地球温暖化の国際枠組み「パリ協定」に復帰する手続きに着手する方針。
脱炭素社会の実現に大規模投資する方針で、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の市場拡大が見込まれる。米国で事業展開する日本の自動車メーカーが一部の恩恵を受ける一方、資源開発企業は規制対応に追われる可能性もある。