[9日 ロイター] – 世界の株式市場は9日、新型コロナウイルス感染症ワクチンの臨床試験(治験)に関するニュースを受けて大幅上昇。S&P総合500種.SPXとダウ工業株30種.DJIは一時最高値を更新した。
米製薬大手ファイザーPFE.Nは、独バイオ医薬ベンチャーのビオンテックBNTX.Oと共同開発する新型コロナウイルス感染症ワクチンの治験で感染を防ぐ有効率が90%を超えたと発表した。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●かつてないほど割高、ワクチンで支援策打ち止めも<ヘラクレス・インベストメンツの最高経営責任者(CEO)兼最高投資責任者(CIO)、ジェームズ・マクドナルド氏>新型コロナウイルス感染症ワクチンの有効性が約束されたとはいえ、今は新型コロナが経済に与えたダメージを冷静に見定める必要がある。基本的に足元の株式市場はかつてないほど過大評価されており、コロナワクチンではこれを治療することはできない。一夜にしてコロナ禍前の水準を超える成長を果たすことなど不可能だ。ワクチンでコロナ流行が終息すれば、米連邦準備理事会(FRB)による無制限の支援策が打ち止めになる可能性が高く、株価上昇を支えてきた要因が失われるだろう。
●楽観ながらも慎重<大和キャピタル・マーケッツ(ロンドン)の経済調査部門責任者、クリス・シクルナ氏>新型コロナウイルス感染症ワクチンに関するニュースは常に市場の上昇要因で、実際に開発されて迅速に配布されれば景気回復が支援される。ただ(米ファイザーと独バイオ医薬ベンチャーのビオンテックが発表したデータに)関与している患者の数はまだ少ない。また、発表されたデータはポジティフだが、査読(ピアレビュー)を受けていない。今回の報告を楽観的ながらも慎重に受け止め、一段の結果を待ちたい。
●接客や航空など出遅れ銘柄が急騰<キルター・インベスターズのポートフォリオマネジャー、ポール・クレイグ氏>新型コロナウイルスワクチンの治験で、感染を防ぐ有効率が90%を超えたということだが、ワクチンは特効薬になり得ない。先進国経済が直面している問題は構造的なもので、ワクチンが大規模な失業を防ぐこともできない。とはいえ、この材料で「リオープニング(再開)トレード」が起こり、接客や航空など過去数カ月間、動きのさえなかった出遅れ銘柄が急騰している。一方、大型のハイテク株は横ばいにとどまっている。ワクチンの進展は、新型コロナの影響を最も受けている欧州経済にとっても明るいニュースで、これにより長期的に欧州の見通しが変化し、再び投資対象として見られるかどうかに注目したい。