世界経済は過剰貯蓄を抱えており、その結果として生じている経済の低迷を自前で解消するための手段を各国・地域の中央銀行も持ち合わせていない。
バイデン次期米政権で財務長官候補の1人とされるイエレン前連邦準備制度理事会(FRB)議長や、サマーズ元財務長官らが出席した16日のブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラムのパネル討論会で下された結論の一つは、このような内容だ。
キング元イングランド銀行(英中央銀行)総裁やラジャン元インド準備銀行総裁も参加したこの討論会では、気候変動や所得格差といった問題への取り組みで中銀の力に限界があることが示されたほか、新型コロナウイルス禍に新興国や貧困国が対処するのを支援する世界的な戦略の必要性が指摘された。
イエレン氏は「貯蓄過剰と投資不足」があり、それが先進国経済が直面している中核的な問題だと指摘。「健全な成長を達成するには、中銀に頼るだけでなく財政政策や構造政策も動員しなければならない」と語った。
また、連邦準備制度が新たに採用した柔軟な平均インフレ目標を巡っては、経済を支えて有害なディスインフレを回避するさらなる余地を確保することになるものの、「長期停滞の観点からは決定打ではない」との考えを表明。米金融当局については、「現時点でほぼできる限りの「手を尽くしている」と評価した。
一方でサマーズ氏は、経済を支援するため各国・地域の中銀は金利を「しばらくの間」超低水準に据え置かなければならない公算が大きいとした上で、資産バブルではなく経済成長を促進する形で過剰貯蓄を吸収するという、世界経済の「根本的問題」に取り組むにはそれだけでは不十分だと話した。
(ニューエコノミー・フォーラムはブルームバーグ・ニュースの親会社であるブルームバーグ・エル・ピー傘下のブルームバーグ・メディア・グループが主催)
原題:Yellen, Summers Say Central Banks No Match for Savings Glut(抜粋)