米オハイオ州クリーブランド郊外のユークリッド。閑静な住宅街に建てられた一戸建てに、農業を営む様子は全く見られない。

  しかしこの住所には、オーガニック・オハイオ・ベリーズやガーリック・ファーミングといった名前の20社が登録されている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に苦しむ中小企業を助けようと、政府が設けたプログラムは、これらの企業にローンや資金を提供した。

  この家の所有者とその家族は、クリーブランド周辺3カ所に農業を思わせる名称の企業72社を登録。米中小企業局(SBA)の経済的損害災害融資(EIDL)プログラムから融資と資金合わせて総額720万ドル(約7億5000万円)の承認を得たことが、州・連邦当局に記録されている。72社はいずれも農業を営む様子はなく、支援供与の条件であった2月1日より前に活動していたことを示す記録もない。オハイオ州の州務当局に登録されたのは、どれも5月より後だった。

カランターリさんが所有する住宅は農業企業として登録されている撮影: Dustin Franz/Bloomberg

  住宅の所有者、ザウル・カランターリさんの代理人であるエドワード・ラルー弁護士は今週のインタビューで、少なくともローンの一部には問題があると考えられ、返済する必要があるかもしれないと認めた。ラルー氏がカランターリさんに起用されたのは今月12日。ブルームバーグニュースによる問い合わせがあった後だという。

  2120億ドル規模のEIDLプログラムに対しては、SBAの監察官が7月の時点で、「不正がまん延している可能性がある」と警告。一つの住所に十数社が支援適用期限後に創設された例などを指摘していた。

撮影: Dustin Franz/Bloomberg

原題:Fraud-Prone Aid Program Sent $7 Million to Family’s Fake Farms(抜粋)