[ワシントン/ウィルミントン 23日 ロイター] – トランプ米大統領は23日、バイデン次期政権への移行プロセスを開始することを一般調達局(GSA)のマーフィー長官に許可したと明らかにした。ただ、大統領選の結果を覆すため、法廷闘争を続ける姿勢も改めて示した。

大統領選の激戦州ミシガン州ではバイデン氏の勝利が確定。選挙結果を覆そうとしているトランプ大統領への逆風が強まっている。

トランプ氏は敗北を認めていないが、民主党上院トップのシューマー院内総務は「トランプ氏が出せる敗北宣言に最も近いものではないか」とコメントした。

<バイデン陣営「数日中に協議開始」>

GSAのマーフィー長官は23日、大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領に書簡を送り、政権移行のプロセスを正式に開始できると通知した。

トランプ大統領もツイッターに、GSAが政権移行開始を承認することを許可したと投稿した。

GSA長官が大統領選の勝者を認定しない限り、バイデン陣営には予算や政府施設、情報などが提供されないため、議会や財界関係者は認定を急ぐよう求めていた。

トランプ氏はツイッターで「われわれは訴訟を精力的に続ける。善戦が続くだろう。そして勝つと信じている。しかし、我が国の最善の利益のため、エミリー(・マーフィー長官)とそのチームに最初のプロトコルに関して必要なことを行うよう提言し、私のチームにもそうするよう指示した」と述べた。

今回の決定により、バイデン氏の政権移行チームは公費と政府施設の利用が可能になるほか、国家安全保障に関する情報も定期的に提供される。

バイデン氏の政権移行チームは「数日中に新型コロナウイルス対策について連邦政府当局者との協議を開始する」と表明。国家安全保障などの問題についても協議を始める方針を示した。

GSAのマーフィー長官は、今回の決定について「私が1人で決めたものだ」と書簡で表明。「ホワイトハウスを含め、行政府から、今回の決定の延期や迅速化について直接・間接の圧力は受けていない」と述べた。

<法廷闘争は継続>

トランプ氏の顧問は、今回の決定について、敗北宣言ではないと主張しているが、ホワイトハウスも政権移行業務を開始する時期が来たと判断したようだ。

バイデン氏は23日、国務長官にアントニー・ブリンケン氏、国家安全保障担当の大統領補佐官にジェイク・サリバン氏、国連大使にリンダ・トーマス・グリーンフィールド氏を起用する人事を発表した。

トランプ政権の関係者はロイターに対し、バイデン氏の政府機関審査チームが、早ければ24日にも現政権関係者との協議を開始する可能性があるとの見方を示した。

オバマ前政権による2008年の商務省での引き継ぎ作業を主導した民主党のドン・ベイヤー下院議員は、マーフィー氏による承認の遅れは「大きな犠牲を伴い不必要だった」と批判。トランプ氏は残る任期中になお多くの害を引き起こす可能性があると警告した。

上下院の民主党指導部は23日、トランプ氏が10月に署名した大統領令によって政権交代前の最後の数週間で政府機関の職員が大量解雇され、トランプ氏に忠誠心のある人材が配置される可能性があると述べて警鐘を鳴らした。

一方、政権移行が正式に開始し、ミシガン州でバイデン氏の勝利が認定されてトランプ氏が結果を覆す余地がさらに狭まったことを受け、共和党内でトランプ氏に敗北を認めるよう求める声がさらに強まる可能性がある。

ミシガン州議会の共和党指導部は州の選挙結果を尊重すると表明。トランプ氏側は州議会がトランプ支持者を「選挙人」に指名し、選挙人の正式な投票でトランプ氏に票を投じる可能性に最後の望みをつないでいた可能性があるが、これも打ち砕かれた。

トランプ氏は選挙日以来、顧問らとの協議を続け、何回かゴルフに出掛けているが、記者の質問には答えず、大統領としての通常の職務もおろそかになっている。