ソフトバンクグループのビジョン・ファンド2号は「デジタル薬」と呼ばれる治療用アプリケーションを開発するスタートアップ、米ピア・セラピューティクスによる8000万ドル(83億円)の資金調達を主導した。
8日に発表された資料によると、今回の資金調達にはシンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスやスイスの製薬企業ノバルティスなど既存の投資家も出資者として参加する。また、ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのエレナ・ビボック氏が取締役会に加わる。
ボストンを拠点とするピア社は、アルコール依存症など物質使用障害や薬物などの乱用に伴う精神疾患である統合失調症の治療を目的としたアプリを開発している。医療用麻酔薬オピオイド中毒の治療法などで既に米食品医薬品局(FDA)の承認も獲得済みだ。
最近は慢性不眠症の治療アプリも発売した。新型コロナウイルスの世界的な大流行が人々の精神的な不安を増幅させる中、米国だけでも3000万人以上が慢性不眠症で苦しんでいる。
米調査会社のグローバル・インダストリー・アナリストによると、世界のモバイル医療アプリ市場の規模は2020年の42億ドルから27年には207億ドルに拡大する見通し。年平均成長率は26%と予想されている。
ソフトバンクGのビジョン・ファンド2号は当初、国内外の投資家から出資を募る計画だったが、現在は同社が自己資金で投資を行っている。中国のオンライン不動産取引プラットフォーム企業の貝殻找房(ベイク、KEホールディングス)への出資では、新規株式公開(IPO)後に株価が上昇するなど成功例も出始めている。