【ソウル時事】韓国の文在寅大統領の支持率に陰りが見え始めた。不動産価格の高騰や新型コロナウイルスの感染再拡大、政権と検察の対立先鋭化が影響し、支持率が「岩盤」とされる4割を下回る。次期大統領選を左右するソウル市長選を来年4月に控え、厳しい政権運営を迫られている。
「腐敗のない社会に進むための長年の宿願であり、国民との約束だ」。文氏は10日、政府高官らの不正を捜査する「高位公職者犯罪捜査庁」の設置法改正案可決の意義をこう強調した。
捜査庁設置は政権公約である「検察改革」の柱だが、宿願の代償は小さくなかった。絶大な権限で時の政権を揺さぶる検察の力をそぐ検察改革では尹錫悦検事総長が抵抗し、政権との対立が泥沼化。尹氏を検事総長として初の懲戒委員会に追い込んだが、政権の強行突破に世論は反発した。
世論調査機関リアルメーターは10日、文氏の支持率が37.1%と過去最低を更新したと発表。大統領選での得票率が41.08%だった文氏の支持率は今月に入り初めて4割を切り、韓国メディアは「岩盤に亀裂が入った」と警鐘を鳴らした。
政治コンサルタントのパク・ソンミン氏は、不動産価格の上昇やコロナ感染再拡大で支持率が落ち込む中、改革を進める政権と与党「共に民主党」の強権的な手法に「文氏を選んだ中道進歩(革新)層が失望している」と分析する。
先月と今月で世論調査を比較すると、文氏の支持率は進歩層で71.7%から57.8%に下落。不支持率は25.7%から37.2%に上昇した。支持政党に与党を選ぶ層の支持率は91.2%から84.6%と小幅減にとどまるが、中道層の支持離れは表面化しつつある。
今後、政権・与党が見据えるのは2022年3月の次期大統領選での勝利。来年4月のソウル、釜山市長選は前哨戦として、与野党が激しい選挙戦を繰り広げる見通しだ。南北関係の進展が見込めない中、文政権は選挙に向けた実績づくりとして捜査庁を年明け早々にも発足させ、支持層の結集を図りたい考えとみられる。
同庁発足後、捜査対象の1番手に名前が挙がるのは次期大統領候補として高い人気を誇る尹氏。だが、疑惑追及を強権的な姿勢で進めれば文氏の支持離れが加速する恐れもある。パク氏は、支持率を回復できないままソウル市長選で与党が敗北すれば「大統領と与党は非常に厳しい状況に追い込まれる」と語り、文氏の求心力低下が進む可能性を指摘した。