- 顧客の平均世帯年収は旧モデル比で約1万ドル上昇、販売の質が向上
- 日産は新車攻勢で立て直し図る、主力の米国市場の販売正常化が鍵に
経営再建を進める日産自動車の復活がかかるスポーツタイプ多目的車(SUV)の新型「ローグ」(日本名・エクストレイル)の米国販売は10月の発売以降好調で、日産が目指す販売正常化への手応えを感じていると同社のマイク・コレラン常務執行役員がインタビューで話した。
米国の販売やマーケティングを担当するコレラン常務は11日のオンラインでのインタビューで、10月末に主力の米国で投入した新型ローグについて旧モデルより購買層の収入が高くなるなど「販売の質が向上している」と指摘。実売価格の大幅な向上を実現できると想定しているという。値引きの原資としてディーラーに支払っている販売奨励金の具体的な水準については明らかにしなかった。
コレラン常務は、新型ローグを購入した顧客の平均世帯年収が旧モデルと比べて1万ドル(約104万円)程度増えているとし、「これまで以上に顧客の世帯収入が多く、支払い能力が高いことを確認している」と述べた。顧客のクレジットスコア(信用力)も上昇しているという。
会社法違反(特別背任)の罪などで逮捕、起訴されたカルロス・ゴーン元会長の経営の下で過度な値引きによって無理に販売シェアを伸ばした過去の拡大路線からの脱却を目指す日産にとって、顧客の収入ベースの改善は販売正常化への追い風になる。
ローグは昨年の販売台数が約35万台と米国販売全体の3割弱を占める主力モデル。新型ローグの法人向けを除いた11月の販売台数は前月比で約20%増となった。
新車攻勢へ
コレラン常務は米国では11月は営業日数が少なかったことを考えると、「立ち上がりとしては非常にハッピーだ」と述べた。新型へのオンラインでの購買意欲がある問い合わせは発売から数日間で30万件を超えたという。
新型ローグについてコレラン氏は、内装の質感のほか安全面などで最新技術を駆使した機能が装備されていることが顧客に評価されているとし、他社の競合車種以上に価格や顧客の期待を上回る価値を提供できているとの考えを示した。
2018年11月にゴーン元会長が逮捕されて以来、日産の業績は急激に悪化。新型コロナの影響も重なって前期(20年3月期)の純損益は6712億円の巨額赤字となった。今期(21年3月期)も当初はほぼ同規模の赤字を見込んでいたが、販売回復やコスト削減の効果で11月には赤字額を減額していた。
日産は販売立て直しに向けて、今年7月からの18カ月間で12の新型車を発売するとしており、ローグはその第1弾として位置づけられている。今後、電気自動車「アリア」や小型SUV「キックス」などの新車投入を予定している。