ブラック・スワンとは、予想も想像もつかないこと、あり得ないことが突然起こることを指している。2020年のブラック・スワンは新型コロナウイルスのパンデミックだ。昨年の11月に武漢でコロナウイルスが確認されたとき、誰一人としてこのウイルスが世界中に蔓延するとは思わなかった。そんな20年もあと少しで終わる。来年はどんな年になるのか。今年のようなブラック・スワンは起こり得るか。来年のことを言えば鬼に笑われるが、ロンドンに拠点を置く金融機関のスタンダードチャータードが21年のブラックスワンを予測している。当たるも八卦、当たらぬも八卦の予想だが、何が起こっても不思議ではない昨今の情勢を眺めるにつけ、ちょっと気になる予想だ。

ブルームバーグが紹介しているSC銀行の予想をさっと眺めてみよう。全部で8つある。最初は来年の1月5日に予定されているジョージア州上院議員の2議席を巡る選挙。共和党が優勢だとみられているが、民主党が2議席を独占するというもの。ブラック・スワンと呼ぶには平凡すぎないか。2つ目は米中関係の改善。バイデン大統領になればあり得るだろう。どうしてこれがブラック・スワンなのか。3つ目は景気の加熱。コロナ対策で世界中に資金が溢れている。ワクチンが効けばこれもあり得る。4つ目はO P E Cの分裂。需要急減で何かと足並みが揃わないOPEC、景気が回復すれば増産競争が始まるだろう。増産競争を巡る思惑の違いでOPECが分裂する。これもあり話だ。5つ目。EUの財政刺激政策が頓挫。パンデミックが終焉すればそうなる。

6つ目、イエレン財務長官が強いドル政策を放棄。市場の潮流はドル安だ。放棄せざるを得なくなるのはある意味当然のこと。7つ目、新興市場のデフォルト。これも十二分に予想されることだ。ブラック・スワンには程遠い。最後はバイデン大統領辞任。前期の7項目に比べるとこれはブラック・スワンっぽい。だが、これも予想も想像もつかないことではない。78歳の大統領である。健康上の危機は常に存在する。ブラック・スワンたりえない。前項目眺めてみるとブラック・スワンに該当するものは一つもない。SC銀行の予想は「起こり得ること」が「起こらない」、それがブラック・スワンだと言っているのかもしれない。ついでに個人的なブラックスワン予想。きのうの選挙人投票で完敗したトランプ氏が、1月20日の大統領就任式の主役になること。