- イエレン氏はFRB議長時代、ドル高の輸出への影響に言及していた
- 「ドルに無関心であるように見えるのは賢明ではない」-サマーズ氏
イエレン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長はかつて、弱いドルが米国の輸出には恩恵になると口にしていた。しかし、次期財務長官としてイエレン氏は、米国を「強いドル」政策に引き戻す圧力に直面している。もし強いドルへの回帰に動かなければ、ウォール街には動揺が走るかもしれない。
イエレン氏の下、米国のドル政策は明確さ取り戻すと市場に期待感
ドルは今年、年間ベースでは過去15年で2番目の大幅安となりそうだ。こうしたドル安が米国に貿易面での競争優位性を与えているとして、外国の政策立案者の間では既に懸念が強まっている。弱いドルを暗黙に支持するだけでも、貿易相手国・地域との緊張は高まる可能性がある。
バイデン次期大統領による指名が上院で承認されれば、イエレン氏は、トランプ政権下で最後となる為替報告書が出されてから約1カ月後に財務長官に就任することになる。同報告書ではスイスとベトナムを為替操作国に認定し、中国や韓国、台湾、タイ、インドなど10カ国・地域を監視対象国にした。
米国は1995年に「強い」ドルを支持する政策を採用した。その言い回しこそ歴代財務長官の間で変化があったものの、ドルが「強くなり過ぎている」と言明したのはトランプ政権が初めてだった。
トランプ政権当局者も時に強いドルを支持したが、常に長期的観点からであり、トランプ大統領とムニューシン財務長官は弱いドルが米国の輸出に役立つと語ってきた。ムニューシン氏はまた、「過度に強いドル」は米経済に打撃を与える恐れがあるとの見解を示していた。
この見解には、イエレン氏も過去に共感を示唆していた。サンフランシスコ連銀総裁やFRB議長などを務めてきた同氏は、ドル高は米国の輸出の足を引っ張ると繰り返し言及していた。
バイデン氏の政権移行チームの広報担当は、イエレン氏と通貨政策についてのコメントを控えた。
通貨政策の監督は財務長官の仕事であり、少なくとも2人の元財務長官はイエレン氏に対し、弱いドルの不支持を明確にするよう促している。
クリントン政権で財務長官、オバマ政権で国家経済会議(NEC)委員長を歴任したローレンス・サマーズ氏は先月、「積極的な切り下げ主義者やドルに無関心であるように見えるのは賢明ではない」と述べた。
ブッシュ(子)政権で財務長官を務めたハンク・ポールソン氏も今月の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)論説面で同様の見解を示した。
ジェフリーズの外国為替グローバル責任者ブラッド・ベクテル氏は「イエレン氏はFRB当局者としてなら、インフレと輸出に関連して弱いドルのメリットを口にすることができる」と指摘。「しかし、財務長官としての典型的な姿勢は強いドル政策だ」と述べた。
原題:Yellen Pressed to Back Strong Dollar in Reversing Trump-Era Tone(抜粋)