【ロンドン時事】感染力が強い新型コロナウイルスの変異種が英国で見つかり、英仏海峡が一時的に閉鎖されたことで、英国内では物流の停滞に懸念が広がっている。海峡に面する英南東部の港町ドーバー周辺の道路では、足止めされたトラックが長蛇の列を成した。欧州大陸から輸入される野菜や果物が不足する可能性も出ている。
フランス政府は21日から英仏海峡の往来を48時間にわたって停止。英政府によると、欧州大陸との玄関口に当たるドーバー周辺の道路では、21日朝時点で約500台のトラックが足止めを余儀なくされたという。
ジョンソン英首相は、マクロン仏大統領と電話で対応を協議。その後の記者会見で「大半の食品、医薬品の流通は影響を受けていない」と述べ、国民の不安払拭(ふっしょく)に努めた。
ただ、英食品・飲料連盟(FDF)のイアン・ライト会長は「貨物輸送の停止はクリスマス期間中の生鮮食品の供給に深刻な混乱をもたらす可能性がある」と警告。英国各地でスーパーを展開する流通大手セインズベリーは「状況が改善しなければ、数日以内に欧州大陸からの輸入に頼っているレタスやブロッコリー、かんきつ系果物などが不足しかねない」と明かした。これを受け、一部スーパーで買いだめの動きも伝えられた。
BBC放送によると、変異種をめぐり英国からの渡航を禁止したのは世界で40カ国・地域以上。年末に欧州連合(EU)離脱の「移行期間」終了を控える中、英国とEUの貿易交渉はいまだ妥結に至っておらず、仮に今回の物流停滞が短期間で解消したとしても、年明けに同じ光景が繰り返される恐れがある。