【ロンドン時事】英国の欧州連合(EU)離脱を締めくくる貿易交渉はクリスマスイブの24日、ようやく妥結に至った。離脱を決めた2016年6月の国民投票から4年半。一寸先の展開すら読めない混迷の連続だった「離脱劇」に幕が下りることになったのは、欧州全体が1年で最も静かなクリスマスの季節だった。
「われわれは主権を完全に回復する」「英国はEUの対等なパートナーだ」。1月末の離脱から間もない3月に始まった交渉でジョンソン英首相は、何度も「主権」「対等」という言葉を口にした。「独立間もない血気盛んな新生国家が旧宗主国に盾突く」(外交筋)ような光景。EUとの協調に配慮したメイ前首相とは対照的だった。
この結果、交渉は本筋の経済そっちのけで政治的な緊張がエスカレート。相手が譲歩するまで妥協しないような意地の張り合いが止まらず、英メディアも「英国とEUのどちらが先におじけづくか」とたきつけた。
当初10月だった「合意期限」はあっという間に過ぎ去り、「決断を下す」と英EUが表明した今月13日の期限になっても「大きな溝」が残った。集中協議は見通しの立たないまま決裂含みで延長戦に突入した。
転機は21日に訪れた。「豪腕」「強権」でならすジョンソン氏がフォンデアライエン欧州委員長と電話会談後、最大の焦点の漁業問題でEUに妥協案を提示。これが呼び水となって双方はわずか数日で合意へなだれ込み、年末に自由貿易協定(FTA)を成立させるという目標の達成へゴーサインが点灯した。
ジョンソン氏は16年の国民投票でEU離脱派を勝利に導いた立役者。EUから「主権を取り戻そう」と連呼し、首相の座にまで上り詰めた。
しかし、離脱条件などを決める昨年の交渉では、合意のために土壇場でEUに大幅譲歩した。今回もEUとの妥結後間もなく、英漁業支援団体から「合意は受け入れられない。(英海域の)主権を取り戻すことにもならない。名ばかりの独立だ」と反発の声が上がっている。