【ワシントン時事】トランプ米大統領支持者による米議会乱入は、政権移行の民主手続きを暴力で妨害した点で、米民主主義の歴史に大きな汚点を残した。トランプ氏はあおり続けた支持者の不満と怒りを自らの政治的願望に利用。世界を振り回した政権の破滅的な最後を印象付けた。

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 ◇「強さ示せ」

 「議会に行進し、勇敢な上院議員と下院議員を激励しよう」。トランプ氏がホワイトハウス近くの広場で開いた集会で支持者に呼び掛けると、数千人が2キロ以上離れた連邦議会議事堂に行進し始めた。

 大統領選でバイデン次期大統領の勝利が確実となった昨年11月7日以降、トランプ氏は「選挙が盗まれた」と訴え、50を超える訴訟を各地で起こした。インターネット交流サイト(SNS)上の陰謀論を増幅させながらも、その闘いは辛うじて民主主義の枠内に収まっていた。

 だが、この6日の集会でトランプ氏は「弱さでは私たちの国を取り戻すことはできない。強さを示さなければならない」と支持者に訴え、暴力をそそのかした。

 ◇忠臣の離反

 政権の末期を象徴したのが、ペンス副大統領とマコネル共和党上院院内総務という、トランプ氏を忠実に支えてきた2人の離反だ。

 大統領選の結果を確定する6日の上下両院合同会議で議長役を務めたペンス氏は、バイデン氏勝利を覆すトランプ氏の要求を拒否。4人が死亡したと伝えられる議会乱入後、トランプ氏支持者に対し「あなた方は勝てなかった。暴力は決して勝てない」と公然と非難した。

 マコネル氏も乱入直前の演説で、大統領選の結果をめぐり「有権者も、裁判所も立場を明らかにした。もしわれわれがそれを覆せば、国家を永遠に弱体化させる」と語気を強めた。

 この日結果が出た南部ジョージア州での上院選決選投票で、共和党の2候補は敗れた。マコネル氏は上院の少数党トップになり、権限は大きく制約される。残り2週間で政権を去るトランプ氏に忠誠を誓う理由はもはやなくなっていた。

 ◇続く分断暗示

 バイデン氏はトランプ氏に事態収拾を求めた演説で、トランプ氏支持者を「真の米国を反映しておらず、私たちが誰であるかを表していない。私たちが目にしているのは、無法行為にいそしむ少数の過激派だ」と断じた。

 6日夜に再開した議会の審議では、共和党議員からもトランプ氏支持者の行為を非難する声が続出した。ただ、2024年大統領選への出馬が取り沙汰されるテッド・クルーズ、ジョシュ・ホーリー両上院議員は、バイデン氏勝利への異議を表明した。民主主義のもろさを浮き彫りにした米国の分断が、トランプ氏が政権を去っても容易には解消されないことを暗示する光景だった。