【ロンドン=中島裕介】日米欧の主要7カ国(G7)は19日、オンライン首脳会議(サミット)を開いた。会議後の首脳声明では「21年を多国間主義のための転換点とする」と明記した。トランプ前米大統領の下で深まったG7の亀裂を修復し、新型コロナウイルス危機や気候変動問題に協調して対応する決意を明確にした。
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国際協調を掲げる米国のバイデン大統領に加え、日本の菅義偉首相、イタリアのドラギ首相の3人が初参加した。議長は2021年のG7議長国を務める英国のジョンソン首相が担った。6月に英南西部コーンウォールで開く対面のG7首脳会議に先立つ会議となった。
声明では、コロナ対策について「新型コロナウイルスに打ち勝ち、より良い回復のために協働する」と強調した。
特に途上国も含めた世界中へのワクチンの供給に向けて、資金を増やす必要があるとの認識で一致。ワクチンを共同購入して低所得国にも公平に分配する枠組み「COVAX(コバックス)」などに資金を連携して拠出する。G7の拠出総額は75億ドル(約7900億円)になると発表した。
米国は最大で40億ドルを拠出、日本は2億ドル、欧州連合(EU)も5億ユーロ(約640億円)を支援すると表明。英国は国内の余剰ワクチンをCOVAXに供給する。
コロナ危機に伴う経済対策について、声明は「過去1年にG7全体で6兆ドルを超える前例のない支援をしてきた」と指摘した。そのうえで「雇用を守り、強固で持続可能で均衡ある経済回復」のためにさらに経済対策を講じる決意を示した。
気候変動対策では米政権がトランプ前政権で離脱した温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に復帰した。19日の声明では「気候変動や生物多様性の損失の反転に関する世界的な野心を、我々の計画の中核に置く」と述べ、温暖化対策をG7の重要課題に位置づけた。菅首相は11月に英国で開く第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)までに2030年時点の目標を打ち出すと表明した。
G7は自国第一主義を掲げるトランプ前政権の下で亀裂があらわになっていた。対立が深まったまま迎えた20年はコロナ禍もあり、恒例の対面会議を一度も開けなかった。国際協調復帰を掲げるバイデン米政権の誕生で、G7の結束が回復するか世界から注目されていた。