9月設置へ 早期成立目指す

 菅内閣の看板政策「デジタル庁」創設を柱としたデジタル改革関連法案は9日、衆院本会議で菅首相が出席して趣旨説明と質疑が行われ、審議入りした。政府・与党は、9月の庁発足に向けて早期成立を目指す。

 首相は本会議で「デジタル庁が司令塔となり、誰もが恩恵を最大限受けることができる世界に遜色のないデジタル社会を実現したい」と述べ、法案の意義を強調した。

 新型コロナウイルスの感染拡大では、行政や民間のデジタル化の遅れなどが浮き彫りとなった。法案は関連5法案で一括審議され、メインとなるデジタル庁設置法案では、他省庁への勧告権を含む総合調整機能を持った庁を新設し、地方自治体も含めた行政システムの統一を進めることで国民の利便性を高める。

 このほか、デジタル社会形成関係整備法案は、行政手続きでの押印を見直し、国や地方で異なる個人情報の扱いを一元化する。マイナンバーと預貯金口座のひも付けを可能にし、災害時の迅速な現金給付なども可能とする考えだ。

 関連法案に対しては、共産党が「情報を一元的に管理すればするほど情報漏えいの危険性が高まる」(小池書記局長)として反対している。この日の質疑でも、同党の塩川鉄也氏は「国に膨大なデータを集積しようとしている。監視社会につながる」と批判し、首相は「個人情報の保護や人権に十分配慮している」と反論した。

 一方、立憲民主党の福山幹事長は9日の記者会見で、法案への対応について「(審議の)スタートラインに立ったところでそれ以上でもそれ以下でもない」と述べるにとどめた。立民など野党の多くはデジタル化の推進は必要との認識は共有している。

 与党内では、法案を4月の早期に成立させることができれば、首相が直後に衆院解散・総選挙に踏み切るのではないかとの見方もある。「肝いりの重要法案の成立を成果に掲げ、政権基盤を固める」(自民党関係者)というわけだ。

 ただ、法案を巡っては、要綱などの参考資料で45か所の誤りが発覚し、審議の出だしからつまずいた。「昭和六十年」を「昭和六十六」、「海上保安庁長官」を「海上保安長長官」と間違えるなどしており、立民の安住淳国会対策委員長は「ここまでずさんなものはない。首相肝いりにしては、チェック体制がどうなっているのか」と批判し、早期成立を目指す政府・与党をけん制した。