11日付のこの欄で専門家の誤解について書いた。同じ本(宮坂昌之著、「新型コロナ7つの謎」、ブルーバックス)から日本のマスコミに関する著者の指摘を引用する。以下は253ページ、エピローグからの引用。

 新型コロナウイルス感染の流行が始まって以来、大きな違和感があったのは、テレビ、新聞などの報道の仕方でした。「日本人の6割が感染する」とか、「多くの人が重症化して亡くなるはずだ」、あるいは「少しでもウイルスを吸い込むと感染する」というような、煽るような伝え方が毎日、毎日、延々と続けられたのは、気が重くなることでした。一方で、新型コロナはインフルエンザと大して違わないとか、ワクチンがすぐに実用化されるであろうとか、すぐに集団免疫ができるであろう、というような、きわめて雑な伝え方も大いに気になっていました。
 どうしてこのようなことが起きるのかと、ずっと考えていたのですが、マスコミからの取材依頼が増え、直接に新聞記者やテレビ局のディレクターの方々とお話しするうちに、その理由がわかってきました。それは、日本のマスコミ界には自然科学に関するリテラシーがほとんど醸成されていなかったということです。

 マスコミ関係の方々が、しかるべき基礎知識を持たずに、他人からの不確かな知識提供(=単なる耳学問)に頼って動いているという事実があるのです。曖昧な知識で行動するのですから、当然、書く記事の内容も、作るテレビ番組の内容も、皮相なものにしかなりえず、科学的根拠の薄い、きわどい題材を扱って、購買部数や視聴率を上げるということが日常的な手段となり、それがいつの間にか、報道の常道となってしまっていたのです。このため、一般の人々は、当然のごとく、マスコミの報道の仕方に大きな影響を受け、多くの人たちは新型コロナウイルスを過度に怖がることとになり、一方で、少数の人たちは新型コロナウイルスなんて大したことはない、経済優先だ、となってしまった可能性があります。残念ながらどちらも正しくないのですが……。

ちょっと長くなりましたが気になる箇所を全文引用してみました。私が個人的に気になったのは記者の自然科学リテラーが低いという箇所ではなく、耳学問に頼っているという宮坂教授の指摘です。誤解を恐れずに言えば「その通りだ」と思います。付け加えれば、読者や視聴者受けしそうな発言をつまみ食いして記事や報道を仕立て上げる。このスタイルは今も性懲りなく続いています。フリーランスを自称する私の名刺の肩書はジャーナリスト。もって深く自戒。