[アンカレジ(米アラスカ州)/北京 19日 ロイター] – 米中高官による直接会談が18日、アラスカ州アンカレジで始まった。会談の冒頭から報道陣の前で激しい非難の応酬が繰り広げられる異例の展開となり、対立の深刻さを浮き彫りにした。19日も協議が行われる予定だが、合意が見込める分野はほとんどないとみられている。

 <メディアの前で異例の応酬>

米中の高官級対面会談はバイデン政権下で初めて。通常は数分で打ち切られる報道陣を前にした冒頭のやりとりは、1時間を超える異例の長さとなった。

ブリンケン米国務長官は「新疆、香港、台湾などの問題、米国へのサイバー攻撃、同盟国への経済的な強要行為を含む中国の行動に対する米国の深い懸念を取り上げる」と表明。

「これらの行動は全て、世界の安定を維持しているルールに基づく秩序を脅かしている」と指摘した。

中国外交トップの楊潔チ・共産党政治局員はこれに15分かけて応答。米民主主義が苦境に立たされているとしたほか、米国のマイノリティー(少数派)の扱いや外交・通商政策を非難した。

「米国は軍事力と金融における覇権を用いて影響力を広げ、他国を抑圧している」とし、「国家安全保障の概念を悪用し、通常の貿易取引を妨害し、一部の国々が中国を攻撃するよう仕向けている」と続けた。

「米国には強い立場で中国との対話に臨むと言う資格はない」とし、「20年あるいは30年前でもそのように言う資格はなかった。これは中国人との向き合い方ではないからだ」と訴えた。

ブリンケン氏は楊氏の発言に意表を突かれたようで、返答するまで記者団を部屋に残した。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は「われわれは衝突を求めていないが、厳しい競合関係は歓迎する。原理原則や自国民、友好国を守るために常に行動する」と強調した。

<米は「パフォーマンス」、中国「外交儀礼違反」>

双方は報道陣を退出させるタイミングについても対立。

冒頭のやりとりの後で米政府高官は、中国側は冒頭発言を2分間にするという事前の約束に背いたと批判。「中国代表団は、大げさに行動することを狙ったようで、中身よりも一般に向けた芝居やドラマのような振る舞いを重視していた」という見方を示した。

中国国営メディアは、米国側の冒頭発言は「非友好的」な上、決められた時間を超過しており、外交儀礼に反すると指摘した。

中国外務省の趙立堅報道官は19日午後の定例会見で、協議では、中国が望んでいない対立が多々あったと述べた。

<すれ違う思惑>

協議の位置づけそのものも争点となってきた。中国は過去の2国間の枠組みを想起させる「戦略対話」だと主張してきたが、米側は枠組みの設定に否定的な立場を示してきた。

米国は17日、中国国有通信会社の事業免許取り消しに向けた手続き開始や、米国で情報通信関連サービスを提供する中国企業に対して召喚状を送ったことを発表するなどしている。

米政権高官は会談前に記者団に対し「協議の大部分は厳しいものになると予想している」と語った。

楊氏は、中国企業に対する措置を協議の直前に発表したのは意図的かどうかをブリンケン氏に問い、「われわれは米国のことを評価し過ぎていたようだ。米国側が必要な外交儀礼に従うとわれわれは考えていた」と皮肉を述べた。

楊氏は新疆、香港、台湾は全て分離不可能な中国の領土と主張し、米国による内政干渉に断固として反対すると表明。

「習近平国家主席が述べてきたように、米国との関係について衝突や対立は望まず、相互尊重とウィンウィンの協力を希望する」と強調した。

米下院外交委員会の共和党委員であるマイケル・マコール議員は楊氏の言動について、中国に態度を変える気がないことを示していると指摘。「中国側の好戦的な態度とうその主張によって、バイデン政権は対峙する相手の真の姿に気付くはずだ」と述べた。