日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、沖縄県尖閣諸島への中国の力による現状変更の試みをけん制し、実践的な日米共同訓練を行うことで一致したのを受け、防衛省は米側と、尖閣有事を想定した具体的な訓練に向け調整している。土台になるのが自衛隊と米軍の役割を明記した日米防衛協力のガイドライン(指針)だ。

尖閣防衛「日本と共にある」 中国に懸念伝達へ―ブリンケン米国務長官

 ガイドラインは自衛隊が「正面」に出て主体的に対処し、米軍が打撃力などで支援する枠組みになっており、日本側は最前線に立つリスクと役割を再認識することになる。

 「日米ともに、どんな挑戦・課題にも、しっかり対応していける」。オースティン米国防長官は16日、岸信夫防衛相との会談でこう語り、高度な訓練を通じ、即応性を強化することで意見が一致した。

 尖閣有事を想定した訓練には、米側は海兵隊と陸海空軍が参加する見通しだが、最前線で展開するのは自衛隊になる。2015年に改定されたガイドラインは離島防衛に関し、自衛隊が作戦を主体的に実施し、「米軍は自衛隊の作戦を支援・補完する」と定めたからだ。当時の政府関係者は「米側にはどこまで関与するか慎重な意見もあった」と話す。

 2プラス2の1週間前、日米の役割分担を具体化するような訓練が在日米軍と陸上自衛隊との間で実施された。米軍横田基地(東京都)配備の12機の輸送機が9日、陸自第一空挺(くうてい)団の隊員500人を東富士演習場(静岡県)上空まで運び、降下を支援した。米側が訓練で提供する機数としては異例の規模だ。

 空挺団は有事に機動的に展開、敵の支配地域を急襲・制圧する任務を担う。ガイドラインに当てはめれば、米軍が「戦闘部隊」の輸送を支援した形だ。米軍ホームページは「今回の目的は日本国内のどこでも空挺部隊を投入できる陸自の能力を示すことであり、効果的な抑止力の一例」とする米軍担当者の見解を掲載した。

 尖閣諸島のうち久場島と大正島は日米地位協定に基づき、米軍が管理する演習場として提供されている。米が了承すれば、自衛隊との共同訓練に使うことが可能になる。政府関係者は「米は過度に緊張を高めることは望んでいない。外交的判断も加味し共同訓練が検討される」と話した。