【ワシントン=鳳山太成】バイデン米大統領は31日、8年間で2兆ドル(約220兆円)規模をあてるインフラ投資計画を発表した。企業増税で財源を賄う。演説で「数百万人の雇用を生み、中国との国際競争に勝てるようにする計画だ」と強調し、議会に早期実現を呼びかけた。

東部ペンシルベニア州ピッツバーグで演説し、「米国雇用計画」の詳細を明らかにした。1.9兆ドルの経済対策で新型コロナウイルスの危機に対応したとして、次は長期的な成長戦略に軸足を移す。新たな計画について「歴史的な経済成長を生み出し、企業の競争力を高める」と主張した。

バイデン氏は連邦政府主導のインフラ刷新に意欲を表した。老朽化した道路や鉄道など交通網の整備に6210億ドル、電力網や通信網にそれぞれ1000億ドルを投じる。

超党派で対中強硬論が広がる議会を念頭に、中国への対抗策としての位置づけも明確にした。国内総生産(GDP)に占める政府の研究開発投資が過去25年減っていると懸念を表した。新計画を実施すれば「国際的な主導権を争う市場で、米国のイノベーションを加速できる」と訴えた。

研究開発投資として盛り込んだ1800億ドルについて「非防衛の研究開発では、史上最大の増額になる」と自賛した。半導体や先端コンピューティング、先端情報技術などを例に挙げ、企業や大学の研究開発を後押しする。半導体の国内生産強化やサプライチェーン(供給網)の強化など製造業の振興に3000億ドルを求めた。

看板政策である地球温暖化対策も前面に押し出した。バイデン氏は「今回の計画は気候変動に立ち向かうための変革をもたらす」と力説した。電気自動車(EV)の市場を広げるため、充電設備の拡充などに使う1740億ドルの予算計上を求めた。

必要な費用は企業増税で15年かけて賄うと説明した。バイデン氏はトランプ前政権が実施した大型減税について「米国の競争力に悪影響をもたらした」と批判した。企業に公正な税負担を求めるとして、連邦法人税率を21%から28%に上げるほか、多国籍企業の海外収益への課税も強化する。

野党・共和党の議員からはバイデン氏の増税計画に反対する声が相次いだ。バイデン氏は演説で「超党派でできない理由はない」と述べたが、特例措置を使って民主党単独で法案の可決を目指す可能性がある。それでも同党内の左派は増税や財政出動の規模を増やすよう求めており、実現は簡単ではない。