[ワシントン 5日 ロイター] – イエレン米財務長官は5日、過去30年にわたる法人税率引き下げ競争に終止符を打つために、20カ国・地域(G20)に対し法人税に世界的な「最低税率」を設定することで合意するよう働きかけていると述べた。
イエレン氏はシカゴ国際問題評議会で行った講演で、今週の国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会に参加する機会を利用し、気候変動、新型コロナウイルスワクチン配布、世界的な景気回復支援などを巡る議論の進展を促したいと表明。
「税金を巡る競争による圧力をなくす」必要があるとし、各国政府が「必須の公共財を賄い、危機に対応するために十分な財源を確保できる安定的な税制度」を整備することが重要と述べた。
これとは別に米財務省当局者は記者団に対し、世界的な法人税の最低税率を効果的にするには、主要国の合意が必要と指摘。米国は企業が租税回避地に利益などを移転しないよう、国内的な税制度を利用するとし、他の主要国もこうした対応を取るよう呼び掛けると述べた。
世界的な最低法人税率の設定は、バイデン大統領がこのほど発表した約2兆ドルのインフラ投資計画の主要な柱の一つ。同計画の下、バイデン政権は米国の法人税率の28%への引き上げを提案している。
イエレン長官はこの日の講演で、先進国はパンデミック(世界的大流行)の影響を受けた経済をうまく支えたとの認識を示しながらも、まだ勝利は宣言できないとし、低所得国に対する一段の支援が必要と指摘。「力強い回復を支援し、世界的な不均衡の台頭を防ぐために、パートーナー国に対し強力な財政策を維持し、支援を尚早に引き揚げないよう呼び掛ける」と述べた。
このほか、IMFの準備資産である特別引き出し権(SDR)を6500億ドル増強すれば、新型コロナ禍で打撃を受けている世界の最貧国に十分な財源が行きわたると指摘。
米経済については、失業率は実質的にはなお9%近辺にあるため、バイデン政権が打ち出した1兆9000億ドルの景気刺激策や、約2兆ドルのインフラ投資計画などでインフレ圧力が高まるとは考えていないと述べた。