【北京時事】中国規制当局が独占禁止法違反で同国電子商取引最大手・アリババ集団に、過去最高となる罰金182億元(約3050億円)を科した。同社を標的にした「アリババたたき」が一段と強まった形で、寡占化により金融サービスやメディアにまで影響力を強めていた同国のIT業界に対する警鐘と受け止められている。

アリババに罰金3050億円 独禁法違反で過去最高額―中国

 中国は2008年に独禁法を施行したものの、技術革新の担い手であるIT大手への厳格な適用は見合わせていた。ただ、アリババやインターネットサービス大手・騰訊(テンセント)などがカネやモノ、情報の流れを握る現状に危機感を抱き、方針を転換。昨年12月にアリババの調査に乗り出した。

 当局はその一方、アリババに事業の大幅な見直しを迫っており、傘下のメディア関連企業の売却を要求したとも伝えられる。電子決済サービス「アリペイ」を手掛ける金融子会社のアント・グループも本業に集中するよう求められるなど、「アリババ帝国」は解体の危機に直面している。

 IT大手の中でも特にアリババに厳しいのは、同社のカリスマ創業者である馬雲(ジャック・マー)氏との確執があるためとみられている。率直な物言いで知られる馬氏は昨年10月、中国の金融行政を厳しく批判。これが習近平国家主席を激怒させ、翌11月に予定されていたアントの新規株式公開(IPO)は直前に延期された。

 IT業界は規制強化を容認する構えを見せており、今後も当局の取り締まりは続く見通しだ。ただ、締め付けが行き過ぎれば、技術革新を担ってきたIT各社が萎縮し、政府が目標に掲げる科学技術の自立にも影響しかねない。米中対立が激化する中、もろ刃の剣となる恐れもある。