- 華融資産が本土外で借り入れた232億ドル、政府は後ろ盾となるのか
- 華融資産は氷山の一角、国有企業は4兆1000億ドル相当の債務抱える
中国でかつて「財神爺(福の神)」と呼ばれた頼小民・中国華融資産管理元会長に対する死刑が天津市で執行されてから11週間が過ぎた。しかし、中国でも極めて悪質な汚職事件は今も金融市場に影を落としている。
習近平国家主席が推し進める反腐敗運動で摘発された頼元会長に収賄罪で死刑判決が言い渡されたのは今年1月。香港やロンドン、ニューヨークなどに広がる疑問は、華融資産が本土外で借り入れた232億ドル(約2兆5300億円)について中国政府が後ろ盾になるのか、あるいは債券市場で海外投資家が損失を被るのかだ。
中国、元国有企業トップに死刑判決-約285億円の賄賂受け取った罪
中国最大級の不良債権受け皿機関「バッドバンク」である華融資産のような重要な国有企業は大き過ぎてつぶせないとグローバル投資家はずっと想定してきたが、それはなお同社に当てはまるのか。または他の企業のようにデフォルト(債務不履行)が許されるのだろうか。
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その回答がもたらす影響は大きい。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のクレジット戦略責任者オーウェン・ガリモア氏は、「中央政府が所有する華融資産のような企業のデフォルトは前例がない」と指摘。もしそうなれば中国とアジアのクレジット市場にとって「重大な分岐点」になると話す。
華融資産のドル建て債は最近、額面1ドルに対し約52セントという安値を付けた。中国国有企業ではこれまであり得なかった急落だ。同社が国内外の社債保有者に負う債務は420億ドル相当。ブルームバーグの集計データによると、そのうちの約171億ドルは2022年末までに返済期限を迎える。
華融資産管理、4月27日期限の債券は全額償還する計画-関係者
15年の香港上場前、華融資産はウォーバーグ・ピンカスやゴールドマン・サックス・グループなど投資家グループに24億ドル相当の株式を売却。ブルームバーグのデータは、ブラックロックとバンガード・グループも多くを取得したことを示している。だが上場以来、華融資産の株価は67%下げた。
会長時代の頼元死刑囚は華融資産をシャドーバンキング(影の銀行)の強力な貸し手に変えた。銀行規制当局の幹部だったこともあり、取締役会やリスク管理委員会からほとんど監視を受けずに融資を実行したという。
習主席肝いりの広域経済圏構想「一帯一路」に関係すると見せかけた事業にも資金が向かったとある国有銀行の幹部は話す。こうした情報を提供した2人は元会長がすでに死亡しているとして匿名を条件に語った。華融資産に融資慣行について問い合わせたが、これについてコメントはなかった。
ブルームバーグからの質問に電子メールで答えた華融資産は、同社には「十分な流動性」があり、監査法人との協議後、20年決算の発表予定日を公表する方針だと説明。中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)に華融資産の状況に関し問い合わせたが、返答は得られていない。
China Huarong Bonds Are in No Man’s Land
「バッドバンク」である華融資産のような重要な国有企業は大き過ぎてつぶせないとグローバル投資家は考えてきた
頼元会長に対する死刑執行は判決からわずか3週間後だった。中国であっても経済犯罪での極刑は珍しく、それを汚職撲滅を続けるとする習主席のメッセージと捉える向きもある。
1つ確かなことは、華融資産は氷山の一角にすぎないということだ。国有企業は4兆1000億ドル相当の債務を抱える。格付け会社フィッチ・レーティングスによると、国有企業は20年に人民元建て債795億元(約1兆3300億円)でデフォルト。これは過去最大規模で、本土の不履行に占める国有企業の割合は前年のわずか8.5%から57%に急上昇した。今年1ー3月(第1四半期)には72%に達した。
北京福盛徳信息咨詢(FOST)の馮建林チーフアナリストは、「金融システムを巡る問題を解決するという任務を引き受けた国有金融会社の失敗を容認するのは、リスク対応で最悪のやり方だ。当局はリスク波及の甚大な影響を考慮する必要がある」と述べた。
原題:China’s Very Bad Bank: Inside the Huarong Debt Debacle (3)(抜粋)