【ワシントン時事】米航空宇宙局(NASA)は19日、火星に着陸した無人探査車「パーシビアランス」が搭載するヘリコプター「インジェニュイティー」の飛行実験に成功したと発表した。地球以外の天体をヘリが飛ぶのは初めてで、将来の探査活動にとって重要な一歩となった。

〔写真特集〕火星の地表

 NASAによると、米東部時間19日午前3時半(日本時間同日午後4時半)すぎに行われた実験で、ヘリは地上から3メートルほど上昇し、空中に約30秒間とどまった後、安全に着陸した。上昇と下降を含めた飛行時間は計40秒弱で、「上空」から画像も撮影した。NASAは今回を含め、1カ月間に5回の飛行実験を計画している。

 インジェニュイティーは重さ約1.8キロで、長さ約1.2メートルの回転翼を持つ。太陽光を動力源とし、NASAジェット推進研究所から探査車経由で無線信号を送って操縦する。

 火星の大気密度は地球の1%程度。上昇できる十分な推進力を得るため、機体は極限まで軽量化され、翼の回転速度は通常のヘリを大きく上回る。飛行実験は米時間11日の予定だったが、機器調整のため延期されていた。

 インジェニュイティーは特別の観測機器を搭載していないが、火星での飛行実験成功で、車輪で移動する探査車が立ち入れない場所での詳細な探査に道が開けた。NASAのジャージック長官代行は、声明を出し「インジェニュイティーが私たちをどこに導いてくれるか、正確には分からないが、本日の結果は少なくとも火星の『空』が(探査の)限界ではないことを示した」と意義を強調した。