【ソウル=時吉達也】韓国のソウル中央地裁が1月、元慰安婦への賠償支払いを日本政府に命じた確定判決について、同地裁の別の裁判官らが判決内容の一部を職権で事実上変更し、訴訟費用の確保に向けた日本政府資産の差し押さえを認めない決定を出したことが20日、分かった。韓国紙、中央日報(電子版)が同日報じた。決定は、差し押さえが「国際法違反になりうる」との判断を示した。
決定は判断の根拠として、慰安婦問題に関する2015年の日韓合意に加え、両国民の請求権について「完全かつ最終的な解決」を確認した1965年の日韓請求権協定に言及。いわゆる徴用工問題をめぐる資産差し押さえに関しても、今後の司法判断に影響を与える可能性がある。
訴訟では、国家は外国の裁判権に服さないとされる国際法上の「主権免除」の原則が認められるかが争点となった。確定判決は、慰安婦の動員が「反人道的犯罪行為」にあたるとして「主権免除」は適用されないと判断。賠償支払いに加え、訴訟費用も日本政府が負担するよう命じた。
今回の決定は、同原則の適用除外が日本の「主権と権威を損なう恐れがある」と強調。資産差し押さえを強行すれば「わが国の司法への信頼を害するなど重大な結果を招く」とし、訴訟費用について「日本政府の負担はない」と結論づけた。決定は1月の判決後に人事異動で後任に就いた裁判官らが出したもので、賠償命令自体には言及していない。