[ワシントン 3日 ロイター] – 米供給管理協会(ISM)が3日発表した4月の製造業景気指数は60.7と、1983年12月以来の高水準だった3月の64.7から鈍化した。新型コロナウイルスのワクチン接種の進展や、大規模な景気刺激策により、これまで抑えられてきた需要が出てくる中、原材料などの供給不足が抑制要因となっているとみられる。市場予想は65.0だった。
指数は50が景気拡大・縮小の節目となり、製造業は米経済の11.9%を占めている。
新規受注指数は64.3と、04年1月以来の高水準だった3月の68.0から低下した。
一方、輸出と未完成品の在庫を示す指数は上昇した。製造業者が需要に追いつくために在庫の取り崩しを始める中、倉庫には在庫がほぼない状態で、製造業者は当面、資材確保に奔走するとみられる。
雇用指数は55.1と、18年2月以来の高水準だった59.6から低下し、市場予想の61.5を大幅に下回った。労働者不足が雇用鈍化の原因とみられる。雇用は20年2月のピークを840万人下回る水準であるものの、多くの産業で企業が人材確保に苦戦している。
労働力不足を背景に、4月に雇用者数が大幅に増えたとの見方が後退する可能性がある。ロイターのエコノミスト調査によると4月の雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比95万人増と予想されている。3月は91万6000人増だった。4月の雇用統計は7日に公表される。
価格指数は89.6と、前月の85.6から上昇。予想の86.1も上回り、08年7月以来の高水準を付けた。これにより、年内にインフレが加速する可能性がある。ウェルズ・ファーゴ(Wファーゴ)の シニアエコノミスト、ティム・クインラン氏は「08年とは異なり、需要は減退から程遠いため、製造業者はコスト転嫁が容易になる」と述べた。
4月は製造業の18部門全てが拡大。ただ鉄鋼価格が高すぎるとの懸念が示されたほか、電気機器・部品メーカーは銅製または鉄製の素材の調達が一段と困難になっていると指摘。自動車業界では世界的な半導体不足で製造が圧迫されている。
FHNフィナンシャルのシニアエコノミスト、ウィル・コンパーノレ氏は「製造業者は需要急増への対応に苦慮している」と指摘。ナロフ・エコノミクスのチーフエコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「状況が軟化していると考える理由はほとんどない」と述べた。