ロンドンで開かれていた主要7カ国(G7)外相会議は5日夕(日本時間6日未明)、中国が台湾への軍事的圧力を強めていることを念頭に「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調し、「両岸問題の平和的解決を促す」とする共同声明を採択し、閉幕した。4月の日米首脳による共同声明と同じ表現を使い、G7として、強い危機感を共有していることを示した。
台湾が世界保健機関(WHO)の年次総会に参加することへの支持も表明。台湾はオブザーバー参加を求めてきたが、中国の反対で実現していない。声明は「台湾の新型コロナ対策の成功を含め、国際社会がすべてのパートナーの経験から恩恵を受けることを可能にするべきだ」とその意義をうたった。
新疆ウイグル自治区やチベットでの人権侵害なども指摘し、中国に対して「ルールに基づく国際秩序への建設的な参画」を促した。
北朝鮮には、非核化への外交プロセスに関与するよう呼びかけ、大量破壊兵器と弾道ミサイルの「完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄」を引き続きめざすと明記した。拉致問題の即時解決も求めた。
ミャンマーでのクーデターについて、声明には「最も強い言葉での非難」が盛り込まれた。平和的な抗議を行う市民への治安部隊による暴力も非難し、民主的な政治体制に戻すことを求めた。国軍が方針転換しなければ「更なる措置をとる用意がある」との警告を発した。
ロシアについては、ウクライナ国境付近での大規模な軍備増強や、他国の民主主義体制の弱体化を狙った「悪意ある活動」、サイバー攻撃、偽情報の活用などを列挙し、「無責任で、地域の不安定化を招く」姿勢が続いているとして「深い懸念」を示した。
声明は、中国が「核心的利益」とする台湾に繰り返し触れるなど、G7外相会議の主要テーマが中国への対応だったことをうかがわせる内容となった。茂木敏充外相はオンラインの記者会見で「G7として、中国に対して自らの経済的規模、役割にふさわしい責任を果たすよう求めていくことで一致した」と語った。
G7として、2年ぶりの対面会合。3日間にわたって、二国間や多国間の会合が繰り広げられた。(金成隆一=ロンドン、高野遼=ワシントン、安倍龍太郎)