この数週間で明るみになった一連の大規模サイバー攻撃は、犯人のずぶとさや、身代金要求型ウイルス「ランサムウエア」に対する課題を浮き彫りにした。バイデン米政権はランサムウエア問題に対応する計画を発表したばかりだった。

  わずか数日間に、米首都ワシントンの警察には犯罪組織に関する情報提供者の情報を公開するとの脅迫がハッカーから寄せられ、イリノイ州は最近の州の監査で司法長官オフィスのサイバーセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)性について警告を受けた。サンディエゴを拠点とする病院運営のスクリップスヘルスでは医療処置が中止され、救急患者がほかの病院に移送される事態となった。

  そして8日には米コロニアル・パイプラインがランサムウエア攻撃を受けたことを確認。米東海岸のガソリンやディーゼルの供給に大きな影響を与える懸念が生じている。この攻撃について詳細は明らかになっていないが、コロニアルはガソリンなどを運ぶ米国最大のパイプラインの停止を余儀なくされた。

米最大石油パイプライン停止 、東海岸動脈-ランサムウエア攻撃か

  オバマ政権時代に国務省でサイバー問題の調整役を務めたクリストファー・ペインター氏は「最近のランサムウエア攻撃はその数字の深刻さやターゲットの範囲から、この問題を国内および全世界で真の国家安全保障上の脅威として対処する必要性を示している」と指摘。「幸いなことにわれわれの政府当局者は注意を払っている」と述べた。

  マヨルカス米国土安全保障長官は先週、ランサムウエアの脅威に対する備えが「今われわれにとって最も重要な優先事項の一つだ」と述べていた。国土安全保障省は3月、60日間でランサムウエア攻撃への対応を強化する計画を発表。司法省も独自のランサムウエア・タスクフォースを創設している。

  ランサムウエアとは、攻撃先のファイルをロックアップし、解除と引き換えに金銭を要求するマルウエアの一種。最近ではデータを盗み取り、支払い要求に応じなければ公開すると脅す例が増えている。

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原題:Ransomware Attackers Up Ante as White House Vows Crack Down(抜粋)