[ワシントン 28日 ロイター] – バイデン米大統領は28日、2022会計年度(21年10月─22年9月)の予算教書を議会に提出した。インフラ投資や教育、気候変動対策などに重点を置き、歳出額は要求ベースで6兆0100億ドルに膨らんだ。
歳出は新型コロナウイルス禍前の19年度から36%強拡大。歳入は4兆1700億ドルを見込む。赤字額は1兆8400億ドルと、過去2年の水準からは縮小する見通しだ。
政府当局者らは、格差是正や気候変動対策などの費用が向こう15年間で完全に賄われるほか、増税効果で30年以降は赤字が縮小に向かうと予想した。
米大統領経済諮問委員会(CEA)のセシリア・ラウズ委員長は、今後2兆ドルを超える赤字削減が期待できると指摘。「これは長期的な財政問題を深刻に悪化させた前政権下での未払い減税とは大きく異なる。財政の健全性を測る上で最も重要なのは債務に対する実質的な利払いで、債務が経済に負担をかけ、他の投資を締め出しているかどうかはこれによって判断される」と述べた。
予算案を巡り、ペロシ下院議長など民主党からは称賛する声が上がった。上院予算委員会のバーニー・サンダース委員長は予算案について「わが国の近代史の中で勤労者家族にとって最も重要な政策」とし、数百万人もの給料の良い雇用創出や貧困の削減に資すると述べた。
一方、共和党は債務残高の増加などを非難。上院トップのマコネル院内総務はツイッターで、「バイデン大統領の予算案は米国民を負債、赤字、インフレで溺れさせることになる」と酷評した。
<国防予算、対中国を重視>
予算教書で求めた国防総省の予算は7150億ドル。軍人の給与を2.7%引き上げるほか、中国抑止に向けた核兵器の近代化などに数十億ドルを充てる。
予算には軍艦やジェット機の購入費のほか、維持費や人件費も含まれる一方、追加で380億ドルが連邦捜査局(FBI)やエネルギー省といった機関の防衛関連プログラムに割り当てられた。国防予算としての規模は前年度比1.7%の7530億ドル。
中国のアジアにおける軍事増強に対抗するための「太平洋抑止イニシアチブ」に割り当てられた予算は50億ドル以上。レイセオン・テクノロジーズの巡航ミサイル「トマホーク」や迎撃ミサイル「SM─6」を含め、レーダー、衛星、ミサイルシステムへの投資を拡大する。
米ゼネラル・ダイナミクス製の戦車「M1エイブラムス」の購入予定数は70両と21年度の102両から減少する一方、米ロッキード・マーチン製最新鋭ステルス戦闘機「F35」は85機を要求。21年度および20年度の予算ではそれぞれ79機、78機だった。
宇宙軍の予算は20億ドル増の174億ドル。海軍の艦船については8隻を要求する。トランプ政権下の建艦計画では12隻だった。
大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載の原子力潜水艦、核弾頭巡航ミサイルを装備した重爆撃機の「核の3本柱」の近代化には277億ドルを投じる。
また、気候変動対策には6億1700万ドルが割り当てられた。
<法人増税で2兆ドルの歳入増>
予算教書とともに発表された財務省の歳入に関する「グリーンブック」によると、法人税の国際的な最低税率を含む法人増税案では、22年度に980億ドル、23年度に1957億ドルの歳入増を見込んだ。10年間で2兆0350億ドルの純増になるという。
また、企業による租税回避地(タックスヘイブン)への資産移転阻止を目的とした税制面での措置を講じることで10年間で3900億ドルの歳入増を見込んだ。
一方で、補助金の対象を化石燃料業界から再生可能エネルギー業界にシフトしたり、電気自動車の開発を支援する案によって、向こう10年間で3029億ドルの歳入減になるという。
このほか、年収100万ドル以上の高所得者層を対象にキャピタルゲイン税を引き上げることで10年間で6900億ドルの歳入増を見込む一方、育児向けの税控除を拡充することで10年間で8218億ドルの歳入減になるとした。