[ニューヨーク 4日 ロイター] – 米労働省が4日発表した5月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比55万9000人増加した。新型コロナウイルスワクチン接種の広がりによりパンデミック(世界的大流行)が収束しつつあり、再度職に就く人が増加、景気回復が順調に進んでいることが示された。市場予想は65万人増だった。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●労働市場の改善示唆、引き締めにはつながらず<ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏>非農業部門雇用者数の伸びが予想を若干下回ったことは、パンデミック(世界的大流行)禍の経済指標を正確に把握することがほぼ不可能であることを強調している。方向性として、これだけの雇用の伸びが得られたのはポジティブだ。
また、3─4月の雇用者数が上方修正されたことも良いシグナルだ。娯楽、接客、教育分野の雇用の伸びが最も大きく、パンデミック後の米経済再開が一段と進展し続けていることを示唆している。5月の雇用統計ではこれら3点が全てポジティブだ。
労働市場の改善が引き続き示唆されたものの、急激ではなく、労働市場のスラック(需給の緩み)の改善は道半ばだと米連邦準備理事会(FRB)が指摘することは可能だ。景気回復は継続しているが、FRBによる債券買い入れ縮小、または利上げの開始には早すぎるとの見方につながり、市場はこの点を好意的に受け止めるだろう。
●FRBは現状維持、緩和縮小討議加速せず<スパルタン・キャピタル・セキュリティーズ(ニューヨーク)のチーフ市場エコノミスト、ピーター・カルディリョ氏>
非農業部門雇用者数の55万9000人増は予想の範囲内で、失業率は予想より低かった。ここで鍵になるのが賃金の上昇だ。過度に上昇していないが、じりじりと上げており、将来的な賃金インフレに危険信号が灯っている。
労働参加率は思わしくなかった。まだ低水準にあり、低賃金労働者は働かずにいる方が多くの収入を得られるため、職場に復帰する意図がないことが示唆された。ただ、各州が緊急失業手当の支給を終了させれば、当然、状況は変化する。
前月の雇用統計が例外でなかったことが示された。現時点では米連邦準備理事会(FRB)は現状を維持するだろう。今回の雇用統計を受け、テーパリング(量的緩和の縮小)を巡る討議が予想より早い時期に加速する公算は小さい。
●パンデミック前の経済にかなり接近
<クナ・ミューチュアル・グループのチーフエコノミスト、スティーブ・リック氏>4月の雇用統計が期待外れだったため、5月の雇用統計が市場予想を下回ったことはさほど驚きではない。大幅な回復はまだ実現していないものの、パンデミック(世界的大流行)発生前の失業率3.5%に向けて少しずつ前進しており、前途は明るい。制限措置が緩和されるにつれ、パンデミック前の経済にかなり近づいているようだ。