【ソウル時事】11日に行われる韓国の保守系野党「国民の力」の代表選で、国会議員の経験もない36歳の李俊錫氏が当選するか大きな関心を集めている。5月末の予備選は重鎮らを押しのけ1位で通過。韓国の主要政党で前例がない30代の代表が実現すれば、来年3月の大統領選への支持拡大につながる。与党「共に民主党」は戦々恐々としている。

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 3日、保守の地盤で、弾劾・罷免された朴槿恵前大統領の地元、南部・大邱で行われた演説会で、李氏は「弾劾は正当だった」と主張。「われわれは過去に戻らない」と「革新」を訴えた。

 李氏は米ハーバード大卒のエリート。26歳だった2011年に当時党非常対策委員長だった朴槿恵氏に委員に抜てきされた。国会議員選挙で3回落選したが、インターネット交流サイト(SNS)での積極的な発信で高い知名度を誇る。

 4日発表の世論調査でも李氏の支持率は2位羅卿※氏(※王ヘンに爰)(57)と約30ポイント差の46.7%。党員投票と一般世論調査を1対1の割合で合算する予備選に対し、本選は党員投票が7割に増えるが、依然優勢という見方が強い。

 政治コンサルタントの朴聖★氏(★王ヘンに民)は「政権を取り戻すために『変化』を望む国民の力支持者の心理を反映している」と分析。選挙の政党公認での女性枠廃止を主張するなど敏感なテーマに切り込むスタイルも李氏の人気の理由に挙げる。

 憲法や党の規定で李氏は次期大統領選に出馬できないが、支持の中心になっている20~30代は中道・無党派層が多く、大統領選を左右するとみられている。

 与党は「いつから国民の力はこんなに手ごわい相手になったのか。これまでの保守的で時代遅れな『おじさん』イメージが変わった」(中堅議員)と危機感を募らせている。関係者は「かつては革新系のわれわれが持っていた『刷新』イメージを奪われる。与党が『変化』を打ち出すのは難しく、李氏のような人材もいない」と語った。

 ただ、李氏は「反フェミニズム」「トランプ米前大統領のよう」と形容され、男性に比べ女性の支持が少ない。代表になれば清新さが失われるという見方もある。他候補は、大統領選予備選を取り仕切る党代表には「安定したリーダーシップが必要」(羅氏)と訴え、「世代交代」阻止に懸命だ。