[ワシントン 16日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は15─16日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げ実施時期の見通しを2024年から23年に前倒しし、テーパリング(量的緩和の縮小)について、いつどのように適切に開始するかの討議を開始した。

FRBは、現時点では支援的な政策を維持すると確約しながらも、新型コロナウイルス感染拡大状況が改善しているとの認識を示し、コロナ禍による危機が経済の重しになっているとの文言を声明から削除した。

同時に発表した最新の金利・経済見通しでは、18人の当局者の過半数が23年に少なくとも2回の0.25%ポイントの利上げを予想。FRBはFOMC声明で「ワクチン接種の進展により、米国での新型コロナウイルスのまん延は減少した」と指摘。ただ「最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに著しい進展が見られるまで、FRBは引き続き米国債の保有を少なくとも月800億ドル、およびエージェンシーローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル増やす」と改めて表明した。

パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、テーパリングについて「討議することを開始した」と表明。「FRBの目標に向けた経済の進展について、今後のFOMCで引き続き検証していく」と述べた。

将来的な政策転換の時期については、「さらに著しい進展」が見られるまで一段の進歩が必要と強調するにとどめ、具体的なガイダンスは示さなかった。ただ「買い入れについていかなる決定を行う前にも、事前に通知する」と述べ、市場との対話姿勢を明確に示した。

FRBは今回のFOMCでフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0─0.25%に据え置くことを決定。声明の文言の変更は直ちに政策変更につながるわけではないとみられている。

一方、超過準備の付利金利(IOER)と翌日物リバースレポ金利をそれぞれ5ベーシスポイント(bp)引き上げると決定。17日付でIOERは0.15%、翌日物リバースレポ金利は0.05%となる。

金利・経済見通しは、今年のインフレ率が大きく上昇すると予想。ただ上昇は「一過性」との見方がなお示された今年の経済成長率の見通しは中央値で7.0%。前回見通しの6.5%から上方修正された。

こうした見通しから米経済が予想よりも速いペースで回復している可能性が示され、FRBによる次の政策措置の討議が正当化されることになる。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの副チーフエコノミスト、ジェームズ・マカーン氏は「FRBはこのところのインフレ高進が一過性との見方を示してきたが、今回のスタンスの変更はこれと若干矛盾する」と指摘。「FRBに対し、スタンス変更に関する説明圧力が強まるだろう」と述べた。

IOERと翌日物リバースレポ金利の引き上げについて、ジャネイ・モンゴメリ・スコットのチーフ債券ストラテジスト、ガイ・レバス氏は、「金融システムに津波のように押し寄せているキャッシュによる短期金利に対するストレスを一部解消させることが目的だった」と指摘。問題の一部は解決に向かうとの見方を示した。