【ワシントン=船越翔、田島大志】米国の情報機関を統括する国家情報長官室は25日、未確認飛行物体(UFO)に関する分析結果の報告書を公表した。米軍などから144件の目撃情報があり、1件を除いて正体が特定できなかったと結論づけた。中国やロシアなどが開発した新たな飛行物体である可能性を指摘したほか、宇宙から飛来した可能性も排除しなかった。
報告書は米議会の要求を受けたもので、米海軍などが2004年以降に撮影した正体不明の飛行物体の映像を分析した。1件は気球だったと判明したが、残る143件については「説明するための情報が不足している」として、現時点では実態が解明できないとした。
その上で、物体の正体について、中露など「外国由来説」のほか「風船など空中の浮遊物」「氷の結晶など自然現象」「米国由来の飛行物体」の仮説を列挙した。これらに当てはまらない「その他」の仮説も示し、「分析するには科学の進歩が必要」との見解を示した。
地球外生命体がUFOを送り込んだ可能性の有無に注目が集まっていたが、報告書では触れられなかった。明確な否定もなく、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「エイリアンを信じる人たちの熱意をさらにかきたてた」と強調した。
国防総省のジョン・カービー報道官は25日、「米空域への侵入は、国家安全保障上の課題を引き起こす可能性がある」との声明を出した。キャスリーン・ヒックス国防副長官は25日、飛行物体の確認を正式任務に位置付けるための計画策定を指示した。
米国のUFO関連団体の調査によると、昨年に全米で報告されたUFOの目撃件数は約7200件で、前年より約1000件増えた。国防総省が昨年4月にUFOに関する動画を公開して以来、新型コロナウイルスの感染拡大で自宅にいる人が空を見上げる機会が増えたとの指摘も出ている。