[ワシントン 2日 ロイター] – 米労働省が2日発表した6月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比85万人増と、5月の58万3000人増から伸びが加速し、10カ月ぶりの大幅増となった。企業が人材の確保に向けて賃金を引上げ、奨励金を提供する中、労働需給の逼迫(ひっぱく)が和らぎつつある兆候を示唆した。

市場予想は70万人増だった。

家計調査に基づく6月の労働力人口は15万1000人となった。また、4・5月分の雇用者数は当初発表から計1万5000人引き上げられ、新型コロナ禍からの経済活動の再開に伴い、米経済が力強い成長モメンタムを維持し、第2・四半期を終了した可能性を示した。しかし、非農業部門雇用者数は依然、コロナ禍前の昨年2月の水準を680万人下回っていることも確かだ。

キャピタル・エコノミクスのシニア米国エコノミスト、アンドリュー・ハンター氏は「雇用回復を妨げてきた一時的な労働力不足が解消されつつある可能性が示された」と述べた。

バイデン米大統領は、新型コロナワクチン接種や米国救済計画によって「米経済を過去100年で最悪の危機から脱却させた。これは歴史的な進展だ」と評価した。

米大統領経済諮問委員会(CEA)メンバーのジャレッド・バーンスタイン氏はロイターとのインタビューで、米雇用が予想よりも早期にコロナ禍前の水準に回復する可能性が示されたと語った。

失業率は5.9%と、5月の5.8%から悪化した。市場予想は5.7%だった。新型コロナ禍に伴う「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっており、こうした要因を除いた失業率は6.1%だった。

しかし、現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は9.8%と、5月の10.2%から低下し、15カ月ぶりの水準に改善した。 

求人件数は過去最高の930万件だった。

業種別ではレジャー・サービス業の伸びが目立ち、34万3000人増と、6月の雇用の増加分の40%を占めた。

州・地方政府の教育関連が増加し、政府部門は18万8000人増となった。

製造業は1万5000人増。世界的な半導体不足が重しとなる中、自動車工場での雇用は1万2300人減少した。建設は3カ月連続で減少した。

時間当たり平均賃金は0.3%増だった。5月は0.4%増加していた。6月の前年同月比は3.6%増と、5月の1.9%増から伸びが加速した。前年同月比の数字は、昨年6月に賃金が大幅に低迷したことによるいわゆるベース効果が一つの押し上げ要因となっている。

求人サイト、インディードによると6月18日までの7日間に掲載された求人募集のうち4.1%が就職した際の奨励金を提供していた。2020年7月1日までの7日間の1.8%から倍以上に拡大した。入社支度金や定着した人へのボーナスなどを含む奨励金は21年6月18日までの1カ月に100ドルから3万ドルに及んだ。

レストラン・宿泊産業の求人サイト、ポーチドジョブス・ドットコムによると一部のレストランの賃金は、チップに加え時給が最大27ドルとなっている。連邦政府が定める最低賃金は時給7.25ドル。一部の州はこれより高い。

労働参加率は61.6%と、前月から横ばい。コロナ禍で深刻な影響を受けた女性が6月の雇用増加分の約半分を占め、女性の労働参加率は57.5%と、前月の57.4%から改善した。

雇用は22年のどこかの時点まで新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の水準に戻らない見込みであり、供給網の混乱により物価が急上昇する中でも米連邦準備理事会(FRB)当局者は賃金の上昇を懸念しないとみられる。パウエルFRB議長は物価の急上昇が一過性の動きであると繰り返し述べている。

TDセキュリティーズのチーフ米国エコノミスト、ジム・オーサリバン氏は「FRBがテーパリング(量的緩和の縮小)の前提となる『さらなる著しい進展』を遂げたと判断するには、さらに数カ月間、状況の改善を確認する必要があるだろう」と述べた。