英国が大胆なコロナ対策に打って出た。正式決定は来週になるが、今月19日にほぼ全てのコロナ規制を撤廃する。もっとも適用対象はイングランドだけ。スコットランド、ウェールズ、北アイルランドでは、それぞれの自治政府が独自にルールの取り扱いを判断する。とはいえ、これだけ大胆にコロナ対策を転換するのは英国が初めてだ。ションソン首相は記者会見で、「ワクチン接種によって(感染と重症化の)関連を断とうと、私たちは多大な努力をしてきた。いま前に進まなければ(中略)いつ進むというのか」と国民に訴えた。これからはコロナとともに進む。これがウィズコロナの姿だろう。ワクチンに全てを託すというわけだ。もちろん反対論もある。この決定が是か非か、判断下せるのは近未来に判明する結果だけだが、個人的にはこれもありかなと思っている。

英国の直近(5日現在)の感染者は2万7100人に達している。インドで最初に発見されたデルタ株が猛威をふるっているせいだ。こんな中で規制を全面的に撤廃する。マスクも義務付けない。感染防止は個人の意思に委ねられる。おそらく同じようなことを日本でやったら、菅首相の首は間違いなく飛ぶだろう。だが死者の数を見ると状況は一変する。英国の1日当たりの死者は直近のピークである1月23日に1348人に達していた。それが7月5日には9人まで減っている。感染者と重症化の関連をワクチンが断ち切ったというわけだ。ワクチン接種で先行する米国は、規制の完全撤廃までは踏み込んでいないが、国民はすでにコロナ前に近い生活を楽しんでいる。日本と違って英米は感染者数ではなく、重傷者や死者の数を感染対策の柱に据えている。コロナウイルス怖い病気であることは間違いない。だが、対策のポイントをどこに置くかによって状況は大きく変わる。

このウイルス、怖い面がる一方で、感染しても症状が出ない人が圧倒的に多い。重症化と死者の数を抑え込めれば、英国のように規制を緩め従来の生活に戻すことも可能になる。決め手はワクチンだ。英国の接種率は7割に近づいている。ワクチン接種で死者を封じ込めた。ジョンソン首相はこれに賭けたのだろう。19日に規制を全面的に解除し普通の生活に戻す。もちろんこれには反対意見も多い。BBCによると最大野党・労働党のキア・スターマー党首は、「いっぺんにすべての安全策を取りやめるのは、感染率が上がっていることに照らすと無謀だ」と批判する。同放送局のニック・トリグル保健担当編集委員は、「感染急増のさなかに制限を解除しようとした国はこれまで例がない」と指摘する。野党もメディアも反対している。日本なら反対一色になるだろう。結果はわからない。個人的には前から感染者の数ではなく、重傷者と死者の数がポイントだと思っている。