米ウィスコンシン州ランダムレークに住む機械エンジニア、マーク・シニンガーさん(24)はピカチュウやヒトカゲなど、子供の頃に集めたポケモンカードのコレクションを売って4500ドル(約49万円)の副収入を得た。
「いつか価値が出ると思って取っておいた」というシニンガーさん。「自分は正しかった」と話した。
同様の考えを持つ20代や30代の若者は多い。懐かしさや、オンラインでの新たな販売方法、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で増えた自由な時間が影響し、年代物のポケモンカードの中にはこの数カ月に価値がうなぎ上りとなったものもある。オークションサイトのイーベイでは、2020年にトレーディングカードの売上高が142%増と記録的な伸びとなり、中でもポケモンカードがベースボールカードを抑えてトップだった。この勢いは今年も続き、1-3月(第1四半期)のポケモンカード出品は1046%急増した。
ポケモンカードの「ゴールドラッシュ」はちょっとした起業ブームを起こしている。新たな販売プラットフォームを提供するビジネスが多数出現し、鑑定サービスは急増する依頼に追いついてない。このうちサーティファイド・コレクティブルズ・グループは先週、5億ドルを超える企業価値で過半数株式をブラックストーン・グループに売却した。
ブームの背景には、子供の頃になじんだブランドを好むミレニアル世代の傾向や、非代替性トークン(NFT)といったインターネット時代ならではの新たな資産コレクションの台頭がある。
すでにこの波に乗ったベンチャーキャピタルもある。新興企業のコレクトベースは今週、資産家ピーター・ティール氏が率いる投資家から資金を集めた。同社はカードコレクションの鑑定や価格追跡、イーベイへの出品などを可能にするアプリ「カードベース」を提供する。強まる要望に応じてこの春、対象をポケモンカードにも広げた。
創業者の1人、アナス・セーラム氏は「ポケモンカードは米国で狂乱的なブームになっている」と指摘。欧州では「もっとツールと啓発が必要」だが、すぐに同じようなブームが起きるだろうと述べた。
コレクターにとってはお金がすべてとは限らない。シニンガーさんは既に得た資金をマンション購入の頭金に回したが、特別なフォルダーに保管する100枚ほどの年代物カードは当面、売るつもりはないという。「懐かしい気持ちでいっぱいだ。子供の頃を思い出す」と語った。
原題:Pokémon Card Prices Are Surging, Fueling a Startup Boomlet(抜粋)