英国で新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、サッカー欧州選手権の決勝が11日、ロンドン市内のウェンブリー・スタジアムであった。地元イングランドはイタリアにPK戦で競り負けたが、会場の観客だけでなく、各地のパブや路上で大勢のファンがマスクなしで歓声を送った。

 イングランド男子が主要大会で決勝に進んだのは、1966年のワールドカップ以来55年ぶり。英BBCによると会場には6万人が入った。来場者は陰性証明などの提示が必要だが、座席でのマスク着用の義務はない。試合中、観客席にマスク姿の人はやはり見当たらなかった。

 スタジアム周辺には午後8時の試合開始の8時間前には大勢が集まっていた。箱買いした酒を手にしたファンらが、ビールをぶちまけながら肩を組んで大合唱。午後1時には少なくとも数百人が集まっていた。マスクを着用した人はほとんど見当たらなかった。

 イングランド旗柄のカツラ姿のビビアン・ジョーンズさんは孫を連れて来ていた。「この18カ月間、コロナ禍でストレスがたまる日々、息抜きしたかった」と語った。ただ、試合は自宅でテレビ観戦するという。「マスクなしの酔っ払いが増える。孫を連れては遅くまで残れない」

1日3万人感染でも規制解除へ

 英国ではインドで確認された変異株(デルタ株)の感染拡大で、1日当たりの新規感染報告が今月11日まで5日連続で3万人を超えた。政府はワクチン接種で重症化を抑えられていると見ており、イングランドでのロックダウンの法的規制を、19日にほぼ全面解除する見通し。

 英国では成人の約87%がワクチン接種の1回目を、66%が2回目を完了している。

 サッカー欧州選手権では6月18日の試合の応援でロンドンの会場やパブなどを訪れたスコットランドの約1300人の感染が判明したばかり。今月11日にはウィンブルドン男子の決勝もあり、大規模なスポーツ大会での感染拡大を懸念する声が出ている。(ロンドン=金成隆一)