昨日、東京都に4回目の緊急事態宣言が発動された。今更という気がしないでもないが、何かが変わったという印象はまったくない。メディアが報じる都内主要地点における人出は、一向に減る気配がない。明らかに宣言効果は薄れている。初日の感染者も東京都は502人に達した。前週比で160人増。1週間平均も756.7人で、同29.2%増だ。前週の同じ曜日を上回るのはこれで23日連続。年代別では20代が最多の172人で、30代102人、40代91人。65歳以上は16人で若い世代に集中している。重症者の数は都の基準で前日から6人減って55人、死者はゼロ。高齢者のワクチン接種が浸透した結果だろう。若い世代は重症化しにくいというコロナの特徴が明確に表れている。
もう一つ気になったのは例の西村発言だ。コロナ担当大臣を兼務する西村経済再生担当大臣が、酒類提供の自粛に応じない飲食店には取引のある金融機関から“圧力”を掛けてもらうと発言したことだ。発言それ自体は即日撤回されたが、テレビの情報番組でこれに絡んだ裏話がいつものように面白おかしく論じられていた。不見識な発言の裏に官僚の怠慢があるとの、某コメンテーターの真っ当なコメントに「なるほど」と珍しく納得した。アベノマスクに始まり持続化給付金の支給に絡んで、大手企業が子会社を何社も介在させた手数料稼ぎ。コロナと関係ないが東芝の不正株主総会問題では経産省の官僚が大株主に圧力をかけたと指摘されている。いずれの問題にも官僚が絡んでいる。すべての責任をなすりつけようとは思わないが、公僕たる官僚の質の低下が気になって仕方がない。
悲惨なのは飲食店だ。某テレビ局で飲食店の女性経営者は、「3月分以降の休業支援金はいまだにもらっていない」と怒りをあらわにしていた。支給が遅れていることもさることながら、菅首相が先週「(支援金の)事前給付」を口にしたことが、当面を糊塗する見せかけの発言と受け止められたのだ。3月分さえ支給されていないのに、どうして事前給付が可能になるのか。これが政府内部で練られた発言かどうかさえ分からない。「政府や役所なんてまったく当てにならない」、女性経営者の怒りを噛み殺した発言がやけに真実味を帯びていた。危機に直面して政府内部の統制が効かなくなっている。まわりにいる専門家もメディアも相変わらず部分だけをつまみ食いしている。「事前給付」が単なるリップサービスだとすれば、首相が協調する「先手」はあまりにも罪深い。支配構造に無数の断層が入りはじめている。