3日後に迫った東京五輪の開会式に、国内スポンサー企業の社長らは軒並み参加を見送る方針だ。無観客での開催が決まったことを受けての措置と、企業側は説明している。大会期間中のCM放映も選手を応援する内容が中心となり、国内外に向かって社名を大々的にアピールする機会は失われつつある。

  日本オリンピック委員会(JOC)のゴールドパートナーを務めるNTTは、開会式と閉会式に役員や社員は参加しない方針。広報部の荒巻優三氏はブルームバーグの取材に対し、欠席理由を「組織委員会が新型コロナの感染拡大を受けて無観客での開催を決断したため」と説明した。

  アサヒグループホールディングスの広報担当、堀井義家氏はアサヒGHと子会社アサヒビール社長の開会式への参加予定はないと回答。スポンサーチケットによる観戦予定もないという。NEC広報担当の野本雄一氏によると、大会の無観客開催決定を受け、同社社長や役員の開会式欠席を決めた。

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  大会期間中のCM放映を巡っても、スポンサー各社の間で自重ムードが広がっている。NTTは今のところアスリートを活用したCMの放送を予定しているが、確定していない。ENEOSホールディングスでは19日から聖火台、電気と水素をテーマにした2本の30秒CMの放映を始めたが、現状を鑑みて広告施策の変更の可能性はあるという。

  パナソニックやブリヂストンと並び、東京五輪・パラリンピックの最高位のスポンサー「ワールドワイドパートナー」を務めるトヨタ自動車は19日、国内で五輪に関するテレビCMを放映しないことを明らかにした。広報担当の山田詩乃氏によれば、五輪向けのプロモーション用CMはもともと予定していなかったとしている。

トヨタ、社長ら五輪開会式に出席せず-国内で五輪CM放映もなし

  東京五輪は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、当初より1年遅れで開幕する。この間ワクチン接種は進んだが、足元ではデルタ株中心に再拡大の兆しが見え、東京都では12日から4度目の緊急事態宣言が発令されている。

  このため、大会のほぼ無観客での開催が決定した。野村総合研究所の今月8日時点の試算によれば、無観客開催時の日本経済に対するプラス効果は1兆6640億円。一方、4度目の緊急事態宣言による損失額は9820億円と推定され、経済効果の約62%が失われると野村総研では分析した。

  また、運営を巡っても開会式を目前に控える中、暗雲が立ち込めている。18日には選手村で行われた新型コロナの検査で海外の代表選手2人が陽性だったことが判明。選手村の入村者では初の感染確認だった。開会式で楽曲制作を担当した小山田圭吾氏は19日、かつてのいじめ告白問題で引責辞任した。

オフィシャルパートナー各社の対応

トヨタ自動車(ワールドワイドパートナー)豊田章男社長らは開会式に出席しない方針国内では五輪に関するテレビCMを放映せず
ブリヂストン(ワールドワイドパートナー)東京五輪のテレビCMを予定せず、計画に変更なし
パナソニック(ワールドワイドパートナー)楠見雄規社長は開会式に出席せず津賀一宏会長は大会組織委員会の副会長として出席する当社幹部の入場は必要な場合のみとする方針
アサヒビール(ゴールドパートナー)アサヒビール社長はもともと出席を予定せず、ホールディングスの方も社長参加予定なしスポンサーチケットの観戦予定もない
ENEOS(ゴールドパートナー)19日にリリースした内容での広告宣伝の展開を予定している現状を鑑みて、広告施策の変更の可能性はある
NEC(ゴールドパートナー)無観客開催を受け、社長や役員が開会式に出席しないことを決めているスポンサー契約をしている選手の応援CMは放送していて、今後も続ける予定。
NTT(ゴールドパートナー)開会式に役員や社員の参加は行わない、閉会式も現時点で同じ扱いTV広告の放送に関しては確定していない、今のところアスリートを活用したCMを放送予定
富士通(ゴールドパートナー)無観客開催が決まったときにスポンサー枠のチケット利用を中止、時田社長や他の役員も開会式には出席しないもともとCM放送の予定がなく、今後もない
明治(ゴールドパートナー)松田克也社長はもとから開会式出席の予定ないパートナーシップとしてスポンサーチケットを使用し、取引先企業と観戦することもしないマーケティングやプロモーション、個別回答を控えさせていただいている
野村ホールディングス(ゴールドパートナー)経営幹部は開会式に出席する予定はないCMは引き続き放映する、キャンセル予定なし