[ワシントン 28日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は27─28日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、新型コロナウイルスの感染者が増加しているにもかかわらず、米経済の回復は引き続き順調との判断を示した。また、見通しは引き続き明るいとし、金融支援策の最終的な解除に向け、議論を継続していくと表明した。
パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)に伴う経済への影響を抑制するためにFRBが2020年春に導入した経済支援策を撤回する時期を迎えるには、米労働市場にはまだ「いくつかの着手すべき課題がある」と指摘。月額1200億ドルの債券購入プログラムを縮小する前に向こう数カ月間にわたり「力強い雇用統計を確認したい」と述べた。
一方、少なくとも現時点では新型コロナ変異株「デルタ」の感染拡大によって景気回復が危ぶまれたり、FRBがコロナ禍で実施した支援策からの撤退を計画する際に軌道修正を余儀なくされたりするリスクについてはさほど重視せず、感染が深刻化している地域では「公衆衛生上の重大な影響を及ぼすことが見込まれる」ものの、一度感染が広がった地域では経済的な影響が限られる傾向があり、今回もその傾向は変わらないとの見解を示した。
また、債券購入プログラムを縮小する際には米債と同じペースで住宅ローン担保証券(MBS)の購入額を縮小する可能性が高いと指摘。テーパリング(量的緩和の縮小)の時期や方法を巡って初めて突っ込んだ議論を行ったとした上で、月額400億ドルのMBS購入額を同800億ドルの国債購入額よりも「早く」削減することへの支持はかなり少ないことから、「買い入れ縮小は同時に進める見込み」と明らかにした。テーパリングの工程については触れなかった。
声明では「ワクチン接種の進展と強力な政策支援により、経済活動と雇用の指標は引き続き力強さを増した」と指摘。6月のFOMC以降、米国の1日当たりの新型コロナ感染者数が4倍に膨らんだことを踏まえ、FRBは継続的なワクチン接種が「公衆衛生の危機が経済に及ぼす影響を引き続き減らす可能性がある」とし、力強い経済再開を可能にすると改めて強調した。
また、FRBメンバーは利上げの前段階である債券購入プログラムの縮小開始時期について議論を進めているとした。
FRBは昨年12月に「最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに著しい進展が見られるまで」債券購入プログラムを維持すると示したが、今回のFOMCでは初めて「経済はこれらの目標に向けて前進しており、委員会は今後の会合で引き続き進展を評価する」との文言を追加。年後半または来年初めにも債券購入額を縮小する可能性を示唆した。
インフレ高進に関してはなお「一時的な要因」に基づいており、差し迫ったリスクはないとした。
FRBは今回のFOMCでフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0─0.25%に据え置くことを全会一致で決定。債券購入プログラムの規模も維持した。
<一段と明るく>
IIIキャピタル・マネジメントのチーフエコノミスト、カリム・バスタ氏は今回の声明について「漸進的に一段と明るくなった」と指摘。FRBは目標に向けて一定の進展があったことを認めたとし、雇用の伸びが好調でコロナ感染拡大によって消費が抑制されなければ、9月にもテーパリングに関して発表される可能性があると述べた。
FOMC前に小幅に下落していた米国株は午後終盤の取引でおおむね上昇。米債利回りは不安定な動きの中で上昇した。ドル指数は小幅に下落した。
FRBはこの日、新たな経済見通しを発表しなかった。
FRBはまた、金融市場が逼迫した際の支援に向け、国内向け・海外向けそれぞれの常設レポファシリティー(SRF)を設置すると発表。国内SRFでは米債、政府機関債、MBSを対象とするオーバーナイトのレポ取引を毎日実施するほか、海外中央銀行向けのFIMAレポファシリティーを通じ、ニューヨーク連銀が保有している米債を対象にオーバーナイトのレポ取引を実施する。
FRBは声明で「これらのファシリティーは金融政策の効果的な実施と市場の円滑な機能を支援する」とした。