[5日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事は5日、国内の景気回復は急速に進んでおり、労働市場も改善していることから、FRBは一部の予想よりも早く金融緩和の解除に着手できるという考えを示した。
シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)が主催したオンラインイベントで「私の見通しは経済が回復するということに尽きる」と表明。7、8月分の雇用統計内容に「大きな期待」を寄せているとした上で、新型コロナウイルス危機に伴い200万人近くが退職したことを踏まえると、国内の労働市場は9月までに85%程度まで回復する可能性があると強調した。
最近のインフレ圧力は一過性にとどまると予想される一方、予想以上に長期化する恐れもあると指摘。コスト増を値上げという形で消費者に転嫁することに問題はないと考える企業もあるため、不安が残るものの、現時点では第4・四半期に物価上昇圧力がある程度緩和されるというのが基本シナリオだと確認した。
<中銀デジタル通貨>
中央銀行デジタル通貨(CBDC)については、これによって対応可能な金融上の問題の多くはすでに他の政策によって対応されており、CBDC導入で米国の決済システムが改善するとの見方には懐疑的という考えを示した。
決済の迅速化や銀行取引業務のコスト削減に関しては、民間部門のイノベーションや他の政策のほうが良い結果をもたらす可能性があると指摘。「FRBのCBDCによって、米国の決済システムが直面している主要な問題が解決されるかについては依然として懐疑的だ」と語った。
また、対処すべき明確な「市場の失敗」がない限り、政府は経済に介入すべきではないとの考えを表明。CBDCによって民間銀行が中抜され、うまく機能している金融システムの崩壊につながる可能性があるとした。
さらに、FRBのCBDCはサイバーセキュリティー上の脅威の標的になる可能性があるとしたほか、FRBは議会の承認なしに国民が利用できるCBDC口座を作ることはできないだろうとした。