[カブール/ワシントン 10日 ロイター] – 米軍撤退完了を前にアフガニスタンで勢力を拡大させている反政府武装勢力タリバンは10日夜、北部バグラン州の州都プリフムリを制圧した。地域住民が明らかにした。タリバンによる制圧は約1週間で7州都目となる。
住民によると、プリフムリのアフガン治安部隊はアフガン軍の大規模基地に向け退却しているという。
欧州連合(EU)高官は10日、タリバンがアフガン領土の65%を支配していると発表。11州都が制圧され、北部のアフガン政府軍からの首都カブールへの支援が絶たれる恐れがあるという。
一方、米ホワイトハウスのサキ報道官は同日、バイデン政権がアフガニスタンの持続的な平和と安定をもたらすには交渉しかないと引き続き考えていると指摘。タリバンによるアフガン全土の支配は不可避ではないとした。
バイデン米大統領は記者団に対し、「アフガニスタンの指導者らは団結しなければならない。自分自身のために、そして国家のために戦う必要がある」とし、米軍撤退に関する判断を後悔していないと語った。
また、米国務省のプライス報道官は「厳しい安全保障環境であることは明らかだ。われわれは日々、脅威環境を評価している」と指摘。米政府はカブールにある大使館と定期的に連絡を取っているとした。
アフガン当局者は、34州中25州で戦闘が行われており、過去2カ月間で6万世帯が避難し、そのほとんどがカブールに向かっていると述べた。
EU関係者は、ここ数カ月で約40万人のアフガニスタン人が避難しており、イランへの難民が過去10日間で増加しているとした。
イランとの国境に近いアフガン西部ファラー州の州都ファラーの住民によると、タリバンと政府軍との間で激しい戦闘があり、主要な政府機関の建物が全て制圧されたという。
国連人権高等弁務官のミシェル・バチェレ氏は、降伏した政府軍の軍人が処刑されたという「深く憂慮すべき報告」を含め、戦争犯罪や人道に対する犯罪に相当するような違反行為の報告があると指摘。「タリバンが権力を握ることで、過去20年間で得られた人権上の利益が失われることが当然ながら恐れられている」とした。