[25日 ロイター] – 米政府は、国内企業に対し、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への自動車部品用半導体の輸出を認めるライセンスを付与した。事情に詳しい2人の関係者がロイターに明らかにした。

ファーウェイは、トランプ前政権が導入したネットワーク関連機器やスマートフォンに使われる半導体の禁輸措置の影響を受けていた。バイデン政権は高速通信規格「5G」対応機器に使われる半導体のファーウェイへの輸出も禁止するなど、強硬路線を一段と強めている。

一方、関係筋によると、米政府はこのほど、ビデオスクリーンやセンサーなどの自動車部品に使う半導体の対ファーウェイ輸出を認めるライセンスをサプライヤーに付与した。同社は米輸出規制の影響を受けにくい製品にビジネスの軸足を移している。

商務省報道官は、米国の国家安全保障や外交政策における利益を損なうような活動を目的にファーウェイが商品やソフトウエア、技術にアクセスすることを制限するため、今後も一貫したライセンス政策を適用すると述べ、ライセンス申請の承認・却下に関して商務省は公表を禁じられていると説明した。

ファーウェイの広報担当者は、ライセンス付与についてコメントを控えたが、「われわれは自動制御型コネクテッドビークルの新たな部品プロバイダーとして位置付けており、OEM(相手先ブランドによる生産)メーカーによる優れた車の製造を支援することを目指している」と説明した。

ファーウェイに対しこれまでも厳しく批判的な立場を示してきた共和党のトム・コットン上院議員は声明で「バイデン政権がファーウェイのような中国のスパイ企業に対する圧力を緩和していることは容認できない」とした。

また、共和党のマルコ・ルビオ上院議員は「バイデン大統領が米国の経済と国家安全保障を守ることができないもう一つの事例だ」と指摘。ファーウェイには中国政府の「デジタル独裁主義」を海外に示してきた過去があるとし、バイデン政権に対し、ファーウェイなど中国のハイテク企業を巡る規制を緩めるのではなく強化するよう求めた。

自動車部品用半導体は、一般的にそれほど複雑なものではないと考えられており、承認に向けたハードルは低い。こうした中、米国の禁輸措置を受け上半期の売上高が急減したファ-ウェイは、自動運転技術などを搭載する「スマートカー」に軸足を移しつつある。

コンサルト会社、サプライ・フレームのリチャード・バーネット最高マーケティング責任者(CMO)は、自動車関連市場には中国の内外で大きく成長する潜在性があり、ファーウェイは同市場に5兆ドルもの資金を投資し始めていると指摘。「自動車やトラックは今や、車輪の上に乗ったコンピューターともいえる。こうした流れの中、ファーウェイは自動車市場に戦略的な焦点を当てている」と述べた。