政府はイスラム原理主義勢力タリバンが実権を掌握したアフガニスタンに残る邦人らの退避に関し、首都カブールの空港に派遣していた政府関係者の一時的な撤退を決めた。1人でも多くの退避希望者を輸送しようと27日もぎりぎりまで調整を続け、邦人1人を退避させることに成功。しかし、同空港を管理する米軍の撤収が31日に迫り、多くの希望者を残したまま時間切れとなった。
26日にカブール空港付近で起きた自爆テロでは少なくとも13人の米兵が死亡。アフガン人を含めると死者数は100人を超え、空港に向かう輸送対象者が犠牲になるリスクが顕在化した。
政府は今回の自衛隊機派遣を、自衛隊法84条の4「在外邦人等の輸送」に基づき実施。「輸送を安全に実施できる」ことが前提となっており、自爆テロにより前提が崩れるおそれもあった。
ただ、自衛隊の活動範囲はカブール空港内にとどまることから、空港の安全は引き続き確保されているとして任務の継続は可能と判断。事実上のタイムリミットとしていた27日も邦人らの退避を模索し続けた。
もっとも、アフガンからの邦人らの退避は思うようには進まなかった。自衛隊の活動が法律上、空港内に限られていたため、退避希望者は自力で空港までたどり着く必要があった。だが、空港に至るルートはタリバンが検問を敷いていたため、輸送対象者が空港に集まれなくなっていた。
政府は、カブール空港で情報収集や調整にあたっていた外務省職員らが周辺国の活動拠点にとどまり、引き続き退避希望者の出国支援などを行うとしている。しかし、米軍の撤収以降は自衛隊機が向かえるかどうかも不透明で、残る邦人らの国外退避はより困難になる可能性もある。(大橋拓史)