[東京 10日 ロイター] – 河野太郎行政改革・規制改革担当相は10日午後、記者会見を行い、自民党総裁選に出馬すると正式表明した。経済政策では、物価目標を掲げて大規模な金融・財政政策を展開したアベノミクスと距離を置いた。 

また、河野氏は原発推進が主流の自民党で珍しい脱原発の論客として長く知られて来たが、原発については「いずれはなくなる」としつつ、2050年の温暖化ガス実質ゼロ達成のためには再稼働が現実的と明言し、産業界への配慮をにじませた。

<2%目標の達成難しい、経済対策規模「もう少し研究」>

金融政策では、先に出馬表明している岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相は共に安倍晋三政権が掲げた2%の物価目標堅持を掲げている。これに対して河野氏は「物価上昇は経済成長の結果」とのオーソドックスなマクロ経済観を披露し、コロナ禍で経済が低迷する足元の状況では「2%の物価上昇率は達成が難しい」と指摘。物価目標達成を錦の御旗に大規模な財政・金融政策を続けるリフレ政策、アベノミクスと一線を画した。

財政出動についても「有事の財政(支出)は避けられない」としつつ、「規模も大事だが、未来を見据えどこに出すべきか議論が必要」と指摘。経済対策の規模についての質問には「もう少し研究させて欲しい」と答えた。

河野氏は安倍政権下で日銀に対して大規模金融緩和からの出口戦略を提言した経緯があるが、会見では「金融政策は日銀に任せる」と述べた上で、マーケットとの対話を求めた。

消費税については「これまでの引き上げを支持してきた」としつつ、今後のさらなる引き上げは「今のところ考えていない」という。

また、アベノミクスは「賃金まで波及しなかった面がある」と指摘し、企業の賃上げを促進する姿勢を示した。

<自民党の歴史観を継承、森友問題は再調査せず>

対中外交方針では「一方的な現状変更の試みに対抗できる枠組みづくり・抑止力の強化を行う」として、領土拡張的な傾向をけん制した。

また「従軍慰安婦」という表現を明記した河野談話についての考え方を問われ、「自民党が継承した歴史観を受け継ぐ」と答えた。

一方、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざん問題の再調査については「検察その他が動いており、必要ない」と明言した。

会見場で配付された政策パンフレットには、新型コロナ対策では「ワクチン接種を迅速に進め、必要な3回目接種の準備を行う」と盛り込んだ。

河野氏は会見の冒頭で、コロナ禍を念頭に「この危機を乗り越えていかなければならない。人が人に寄り添う、ぬくもりのある社会をつくっていきたい」とも語った。

(竹本能文 編集:青山敦子、田中志保)