【カイロ時事】未曽有の経済危機下で燃料不足が深刻なレバノンへ、米国が禁輸措置を科しているイラン産原油の供給が始まった。レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが関係の深いイランに要請し実現した。ただ、米国など国際社会は、「テロ組織」に指定されるヒズボラの存在感が一段と増す事態を警戒。イランの影響力拡大への懸念も強まりそうだ。

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 イランを出航した原油タンカーは今月12日、シリア西部バニヤス港に到着。その後、トラックに積み替えて陸路レバノンへ16日に搬送された。沿道ではヒズボラ支持者らがイラン国旗を掲げるなど盛大に迎えた。

 ヒズボラ指導者ナスララ師は、人命に関わる病院や高齢者施設などに優先配布するとし、「利益目的ではなく、国民の苦しみを軽減したい」と述べた。今後もイランからタンカー数隻が到着予定だという。

 原油はヒズボラがイランとの強固なパイプを駆使して調達し、レバノン政府は「許可の申請はなかった」とする立場だ。国家再建へ国際社会の財政支援を必要とし、「制裁破り」の批判をかわす狙いもあるとみられる。

 英BBC放送によれば、今回の燃料は国内消費量の数日分にすぎない。ただ、米国はレバノンの燃料不足解消に向け、エジプトから天然ガスをパイプラインで運ぶ案を支持しており、9月初旬にレバノンを訪れた米国の議員団からは「レバノンには他の燃料調達先がある。イラン産原油に依存すれば深刻な結果を招く」と懸念の声が上がっていた。制裁を受ける可能性も取り沙汰されるが、米政府は静観している。