【ロンドン時事】英国でエネルギー会社の破綻が相次いでいる。新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴い天然ガス価格が高騰し、燃料コストの増加が経営を圧迫しているためだ。8月以降で既に5社が事業継続を断念。さらに増える可能性が高く、英政府は対応に追われている。
規制機関の英ガス・電力市場局(OFGEM)は20日、今月中旬に破綻したピープルズエナジーの約35万件の顧客を、大手のブリティッシュガスに引き継ぐと発表した。クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略相は議会で「エネルギー供給に問題はない。顧客保護に最優先で取り組む」と述べ、懸念払拭(ふっしょく)に努めた。
欧州の天然ガス価格の指標となるオランダTTFはこの1年でほぼ5倍に値上がりし、20日には史上最高値を更新。気候変動対策で脱石炭の流れが進んでいることも、天然ガスの需要を世界的に押し上げている。
英メディアによると、英国ではエネルギー市場の自由化が進んだ結果、約70社が天然ガス事業に参入し競争が激化。価格高騰が続けば、小規模事業者を中心に破綻が続出する恐れがある。
一方、天然ガスを多く使う肥料工場もコスト高を理由に一部が操業を休止。肥料生産の際に生じる二酸化炭素(CO2)が冷却剤などとして食品業界で大量に使用されていることから、食品供給に支障が出る事態も懸念されている。