[香港 29日 ロイター] – 経営危機に陥っている中国の不動産大手、中国恒大集団は29日、保有する盛京銀行の株式17億5000万株を99億9000万元(15億ドル)で売却すると発表した。盛京銀は恒大の主要取引銀行の1つ。

恒大によると、盛京銀は株式売却による収入全額を同行グループに対する関連債務返済に充てるよう求めているという。

これは先週に債券の利払いを見送った恒大が、29日に期限を迎える4750万ドルの別の利払いなど、他の目的に収入を充てられないことを意味している。

香港取引所に提出された資料によると、売却分は盛京銀の発行済み株式の19.93%に相当し、国有の資産管理会社、瀋陽盛京金融投資集団に1株当たり5.70元で売却される。

これにより、盛京銀に対する瀋陽盛京の出資比率は20.79%となり、筆頭株主に浮上。恒大は14.75%に低下する。

恒大の許家印主席は発表文で「自社の流動性問題は盛京銀に大きな悪影響を及ぼしている」と指摘。「国有企業の買い手を引き入れることで盛京銀の経営安定につながると同時に、自社が保持する盛京銀の株式14.75%の価値向上・維持に資するだろう」とした。

建銀国際(CCBインターナショナル)がニュース報道を基に先週のリポートで明らかにしたところによると、昨年上半期時点で、盛京銀の恒大向け融資は70億元で融資総額の1.19%を占める。

盛京銀の財務健全性は5月から注目されている。経済メディア「財新」が、同行と恒大の間の1000億元(154億5000万ドル)超相当の関連取引を銀行監督当局が調査していると報じたことがきっかけだ。

恒大は7月5日の発表文で、盛京銀との金融ビジネスは法的要件に適合していると説明した。

盛京銀が本拠を構える瀋陽市は数日後、地元の国有企業に同行の株式をさらに取得するよう促した。

中国政府は中国恒大グループの一部資産を購入するよう、政府系企業や国有不動産開発会社に要請している。

盛京銀が発表した今年上半期決算は、純利益が前年同期比63.6%減の10億3000万元。新型コロナウイルスの影響、純金利収入の減少、「事業経営を巡る不透明感拡大」を背景とする資産評価損に対する引き当ての増加を減益の理由に挙げた。

6月末時点の不良債権比率は3.04%と、業界平均の約2%を上回った。